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キッコーマングループ近畿事業所■移転&ワークプレイス改革プロジェクト

「各社が働き方を選択する」数多くの施策を施した、
6社を包括するキッコーマン近畿事業所、移転から1年。

キッコーマン食品株式会社
近畿支社長
宍倉 俊也 氏

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社員の自律性向上とグループ間連携強化を目指す

エントランス

キッコーマングループの近畿事業所は、会社設立の翌年1918年に大阪の地に開設された重要な国内営業拠点の1つ。中核会社のキッコーマン食品をはじめ、キッコーマン飲料、キッコーマンビジネスサービスなどグループ6社が集まり、従業員約100名が在籍する。今からおよそ1年半前の2015年11月、オフィスを肥後橋からなんばパークスのパークスタワーに移転したのを機に、各社の個性を生かしながらグループシナジーを高めるための働き方改革をスタートさせた。

「新しい働き方と言うと大げさですが、私がこのオフィスの責任者として目指したかったのは、上司から指示されて動くのではなく、1人ひとりの社員が自律性を持ち、部署の垣根を越えて新たなビジネスチャンスを見つけ広げていける職場です」と話すのは、キッコーマン食品近畿支社長の宍倉俊也氏。移転前のオフィスは、それまで近畿の営業拠点のグループ各社を段階的に集約した結果、3フロアに分散していた。グループ7社(当時)が同じ建物に居ながら、会社間の交流は少なかったという。「例えば、我々の得意先であるスーパーマーケットのチェーンさんに対し、キッコーマン食品は醤油などの調味料を販売し、キッコーマン飲料は飲料を販売しています。グループ会社が互いに情報を共有し、強みや弱みを補完し合えば、ビジネスチャンスはもっと広がるはずなのです」(宍倉氏)。

グループ間の連携を強化するため、新オフィスでは7社をワンフロアに集約し、キッコーマン食品はフリーアドレスを核とするアクティビティ・ベース型のレイアウトを導入した。つまり、座席の固定を解除し、作業内容に合わせて働く場所を自由に選べるようにすることで、社員の自律的な働き方と部署間のコミュニケーションを促し、成果の最大化を狙ったのだ。

フリーアドレスの導入は、東京本社や野田本社(千葉県)に先駆けた、グループでも初の試みだった。「キッコーマンは、今年で創立100周年という歴史ある会社です。また、醤油という日本の伝統的な商品を取り扱っていることなどから、保守的なイメージを持たれがちです。しかし実際には、海外進出や醤油以外への幅広い商品展開など新しいことにチャレンジしてきており、経営陣はその認識のギャップに歯がゆさを感じていました。このオフィス移転に伴う働き方の変革には、チャレンジ精神を会社の風土として根付かせたいという会社の狙いもありました」と宍倉氏は話す。

ワークプレイス戦略立案を含めた1年9ヶ月の長期プロジェクト

オフィス

移転が検討に上がった直接のきっかけは、2011年3月に起きた東日本大震災だった。首都圏エリアにある本社が被災した場合に備え、近畿支社に第2の本社機能を持たせる必要性が浮上したのだ。肥後橋にあった旧オフィスは、ビルが築40年と古く、また被災した際の水害のリスクもあった。「BCPの観点からオフィスの立地自体を見直す必要があり、せっかく移転するなら、それを機会に新しい働き方にチャレンジしてみようということで始まったのです」と宍倉氏は振り返る。

2014年2月、移転プロジェクトがスタート。ワークプレイス戦略を検討・立案するパートナーとしてCBREを起用し、まずは現状のオフィスの実態を把握するためのワークプレイス調査を実施した。通常の移転プロジェクトは、移転先の選定から引越までおよそ1年での完了を見込むが、働き方改革を伴う同社のような場合は、ワークプレイス調査および戦略立案を含めた長めのスケジュールが設定される。実際、同社も移転先を探し始めるタイミングよりも1年前から始動し、引越までは1年9ヶ月を要した。

ワークプレイス調査では、オフィスの利用状況を1週間観察した結果、デスク使用率は最大で8割弱であることが分かった。このことから、新オフィスでは個人デスクの割合を20~30%減少させ、代わりに作業内容に対応したスペースに転用することで、全体のオフィス面積を最適化できる可能性が見えてきた。また、社員を対象にしたアンケート調査では、話しかけられることなく集中して作業できる場所や、簡単なミーティングや電話ができる場所、共同作業ができる場所などのニーズが高く、また離席中や社外からのメールや社内サーバーへアクセスできる環境が求められていることも分かった。

オフィス

同時に、近畿支社長と部門長を対象にインタビューとワークショップを実施し、近年のワークプレイスデザインの潮流を理解したうえで、将来、近畿支社が持つべき組織文化の方向性や、働き方についてのディスカッションを行った。ここでは「新規顧客を増やすために外勤率を上げたい」「オフィスに戻った時に、相談しやすい環境をつくることが重要」「ワンフロアを共有し、顔を合わせることが大事」などの意見が出た。その後、これらの調査・分析結果をもとに、新しい近畿支社オフィスのビジョンを設定。それが、この記事の冒頭で宍倉氏が語った「社員の自律と部署の垣根を越えた連携を促すオフィス」なのである。

社員の意見をレイアウトに反映 全員参加のオフィスづくり

オフィス

2015年2月からは、総務部が中心となって移転先の選定を開始。BCPの観点による安全性、7社をワンフロアに集約できるフロア面積、賃料などを検討し、同年5月、CBREの仲介によりパークスタワーに決定した。旧オフィスは天井が低く圧迫感があり、外光も少なかったことから、天井が高く明るいオフィス環境であることも重視した。

オフィスのレイアウトやデザインには、可能な限り社員の意見を反映させるようにした。例えば同社には、得意先に調理を提案するためのテストキッチンや、新商品を提案するプレゼンルームなど、食品会社ならではの設備も多い。各部門から実務に関わるメンバーも含めた代表者を1~2名、計10名ほどを選抜し、月1回のミーティングでスペースの使い方に関する要望を吸い上げていった。このミーティングにはCBREも参加し、専門家の立場から先進トピックの提案やアドバイス、他社事例の紹介などを行った。フリーアドレスの提案もその1つである。

ただし、オフィスのあり方や働き方を変えることに対して、初めから社員の同意を得られたわけではなかったという。「特にフリーアドレスに対する社員の不安が根強かったですね。部署ごとにまとまったデスクのほうが一体感がありますし、“報連相”もしやすいというわけです。変化を望まない保守的な意見が多かったのも事実です」(宍倉氏)。

オフィス

そうした社内の不安を払拭し、移転に向けて前向きな空気を醸成できたのは、明確なワークプレイス戦略があったからに他ならない。「私自身、社員の自律的な働き方を目指すなら、フリーアドレスは欠かせないと思っていました。社員にはオフィスのビジョンと目的を繰り返し伝え、また『自分たちの職場環境を自分たちでつくれる絶好の機会だから、全員で新しいオフィスをつくっていこう』と話しました。100%納得を得られたかどうかは分かりませんが、少なくとも前向きに捉えてくれたと思っています」(宍倉氏)。

見通しの良いオープンな空間 社員が働く場所を選べるオフィス

オフィス

ではここで、新しい働き方を実現する同社のオフィスデザインをあらためて見てみよう。

執務空間は見通しが利く壁のないワンフロアオフィスで、フリーアドレスを採用。中央にはメイン動線を配置することで、スタッフの所在を把握しやすくし、またグループ各社の社員同士の偶発的なコミュニケーションを促す設計にした。フリーアドレスの導入によって生まれたスペースを活用し、作業に応じて選べるスペースの種類を多数用意した。例えば、作業に集中するための「集中デスク」、携帯電話による外部との打ち合わせやマンツーマン教育を行える「集中ブース」、手軽にミーティングが行える「セミオープンスペース」、営業資料やサンプルを準備するための「セットアップエリア」などである。また、無線LANを導入して場所に縛られない執務環境を構築したほか、会議室やセミオープンスペースにはモニターを設置し、社内のIT環境も整備した。

オフィス

ゲストエリアにもこだわっている。旧オフィスでは、キッコーマンブランドを顧客にうまくアピールできていないことも課題だった。そこで新オフィスでは、エレベータ前の共用エリアにキッコーマンのCIカラーを用いた光壁やサインを設置し、キッコーマンとしての「顔づくり」も意識した。また、エントランスには、伝統的な醤油製法に関連する麹蓋(こうじぶた)をモチーフとした商品PR棚を設置し、ブランド訴求の場としている。

新しい働き方を実現するためのチェンジマネジメントプログラム

オフィス

移転までの約半年間は、従来とは異なる新しい働き方を実現するための「チェンジマネジメントプログラム」を実施した。新しいオフィスをつくるだけで働き方が変わるわけではない。新しいオフィスを望ましい形で使いこなせるようにするための意識改革が非常に重要なのである。各部署から選出されたコアメンバーによるミーティングを実施し、新しいワークプレイスの枠組みへの理解を深めるとともに、近畿支社の業務に相応しい形にするためのアイデアや、運用ルールを立案した。それらを所属長会議に提案し、承認される仕組みで取り組んだ。社員から不安の声が上がっていたフリーアドレスの運用については、混乱を避けるため段階的に導入することを決めた。移転後の半年間は、部署や会社ごとにゾーン分けを行い、その範囲内でフリーアドレスを実施。1年半が経った現在は、総務や企画など間接部門の固定席をオフィス中央に配置し、その両側で営業部門のフリーアドレスを実施している。

チェンジマネジメントの取り組みは、移転後も継続され、より良い運用方法の模索が続いている。フリーアドレスの運用については、現在も問題がないわけではない。導入前に懸念されたように、自由席になったことで上司と部下のコミュニケーション不足が露呈しているケースもあるという。「本来は、部下から報連相するだけなく、上司からも部下に声をかける双方向コミュニケーションが前提です。ただ、それができるかどうかは個人差があるため、書類の処理が遅れたり、部下へのサポートが行き届かないなどの問題も皆無ではありません」(宍倉氏)。こうした問題に対しては、上司と部下が目の届く範囲に座ることや、ソフトを活用した在席確認をルール化することで、上司と部下がコミュニケーションを取りやすい環境に配慮している。「現在は、フリーアドレスに対する不満や不安点をヒアリングし、その都度対策を考え実行しながら、新しい働き方を模索している段階です。いずれはオフィス全体をフリーアドレスにしたいと考えています」と宍倉氏は話す。

オフィス

こうした問題が一部で生じているものの、新しいオフィスは社員にはおおむね好評だ。移転後のアンケート調査では、82%の社員が新しい環境に満足しており、以前の環境には戻りたくないと回答。社内無線LANやTV会議システムなど、場所にとらわれない働き方を実現するテクノロジーの導入に対しても、70%以上の社員がポジティブな評価をしている。また、社員の半数以上が、グループ会社間でのコミュニケーションが増えたと感じている。実際に、オフィスの至る所でパソコンをモニターにつなぎ、気軽に打ち合わせをする光景が見られるという。互いに顔が見える距離で仕事をすることで、声をかけやすくなったという声もあるようだ。これはまさに新しいオフィスが狙った働き方と言えるだろう。「営業のチャネルや所属会社の垣根を越えて情報が共有され、連携が強化されれば、営業活動でのセールストークや提案の幅が広がっていくのではと期待しています」と宍倉氏は話す。

プロジェクト詳細
企業名 キッコーマングループ近畿事業所
所在地 大阪府大阪市浪速区難波中2-10-70
施設 なんばパークス内パークスタワー
移転時期 2015年11月
CBRE業務 ■オフィス移転仲介 ■ワークプレイス戦略コンサルティング

 

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上記内容は BZ空間誌 2017年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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