新時代に向けたサービスの創出を育む、起業に適した環境とファシリティ
株式会社フラットリンクス
代表取締役社長
櫛田 瑞穂氏
“人”の出会いを重視した保険関連事業
株式会社フラットリンクスは、保険を検討されている消費者と、保険を販売する営業担当者をマッチングするサービス、「ほけんトーク」を提供している会社です。日本の世帯の9割が加入している保険ですが、一般の消費者で保険をよく理解している人はごく少数。一方で、販売する側は、知識はあっても消費者がどこにいてどんなニーズがあるのか分からない。そこで、お互いが分かりやすく見つけやすいプラットフォームを作りたいというのが、私がこの事業を始めたきっかけです。
消費者は、保険について気軽に相談できる相手を探したくても、検索エンジンでは出てきません。他社が提供している従来のサービスは、WEBで申し込んで、その後、来店か訪問により実際に対面で会う約束をするというプロセスを踏みます。でもそれが、“外れ”だったら? 折角会っても、労力と時間が無駄になってしまいます。消費者は、誰に会うか、自分に合った人を選んでから会いたいのでは、と私は考えました。保険ショップ側にとっても、一度、何か違うと思われてしまうと、その消費者はそのショップに行かなくなってしまうというリスクがあります。こうした消費サイドも販売サイドも非効率な状況から脱却し、身近にあるスマホを活用して効率的な出会いを実現するサービスが「ほけんトーク」です。
このサービスの大きな特長を挙げると3つあります。1つは、消費者は匿名、無料で生命保険についての質問や相談ができ、対面では話しづらい内容もスマホで相談できること。2つ目は、アプリでの対話を通じて、自分のペースで聞きたいことを伝え、専門家(保険の営業担当者)から要望に沿ったアドバイスを得られること。3つ目は、対話を通じて、複数の専門家から、自分に合った相談相手を探せることです。消費者は、Facebookのアカウントがあれば、すぐに利用を開始することができます。ちょっとした空き時間に相談内容を入力すれば、それを見た専門家、最大3人からアドバイスが返信されます。それらを保留にすると、別の新たな専門家からのアドバイスも受信でき、自分に合った相談相手を選んでメッセージング(チャット)を始めることが可能になります。また、当社自体は代理店ではなく、募集関連行為を行う事業者であり、自らが提案などの回答を消費者に行うことはありません。消費者はパーソナライズされた商品が欲しい、売る側は無駄を省いて生産性を上げたい、という相反する関係をテクノロジーで効率化するための仕組みを、これからも進化させていきたいと考えています。
個室とコワーキングスペースの双方が充実
起業して2年になりますが、最初の1年を自宅で準備期間に充てた後、都内に拠点を持とうということになり、検索サイトでレンタルオフィスを調べました。立地は、IT関連企業が集積する渋谷か、取引先である金融・保険業の多い丸の内・大手町で探したのですが、渋谷のレンタルオフィスには、個室とコワーキングスペースのバランスが自分の希望に合わない物件が多かったのが事実です。長時間労働になるため落ち着いて仕事をする場所と、来客とコラボレーションする場所の両方の空間を重視しているのですが、一方が充実するともう一方が手薄になるケースが多かったように思います。
そうした中、大手町で見つけた「SPACES」は、個室と共有スペースが同じクオリティで共存しており、自分のワークスタイルに合っていると感じました。開発、電話、資料作成などの個室作業が多いのと同時に、突然の来客とのミーティングの頻度も高く、その人数も一定ではないのですが、こうした状況に対応できるキャパシティを備えている施設は少ないでしょう。 また、打ち合わせ場所だけでなく、机サイズのバリエーションも豊富で、紙を広げて皆でディスカッションできる大机を備えるなど、コラボレーションのためのファシリティにも細かく配慮されていると感じました。さらに、「SPACES」のスタッフの方からは、メディア関連や弁護士等の専門家を紹介してもらうことも可能で、起業して日が浅い企業には助けになっています。
私は現在、ほけんトークのビジネスとは別に、コミュニティの仲間と共に、新しい事業のコンセプトワークに取り組んでいます。そのために適したこの環境を活用し、イノベーションを起こしていきたいと考えています。
〔取材●2018年4月〕