シービーアールイー株式会社
リサーチ
山口 武
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大阪のオフィスマーケット未曾有の低空室率時代
2017年3月期に大阪のオフィス空室率は、1993年の調査開始以来の最低値を更新した。その後も空室率の低下は続いている。6月期には初めて3%を下回り、直近の8月では2.6%となった。大阪のオフィスマーケットは未曾有の低空室率時代となっている。
図1 大阪オフィス空室率の推移
まとまったスペースを確保するのは至難!?
大阪のオフィス全体の空室率が3%を下回る状況において、テナントが希望する条件を全て満たすビルはほとんどない。もはや必要なオフィススペースを確保できるかどうかを認識すべき状況と言えよう。大半のテナントが移転を検討する際の最低条件とする一定の規模(延床面積1,000坪以上)で耐震性を満たしたオフィスビルは、約600棟である。最新の空室保有状況をみると、そのうち過半数を超えるビルが満室。満室と100坪未満の小さい空室を保有するビルとの合算で8割を占める。300坪超の空室を保有するビルは5%にも満たない。まとまったスペースを必要とするテナントにとっては、希望エリアが大阪市内ならば、築年数が経過していても構わないと条件を広げても、市内のオフィスビル100棟に対して4~5棟しか該当する物件がない。立地も、築年数も問わないテナントはいないであろうが、足元の状況は条件に見合うビルの空室発生を待ち続けるリスクを回避して、スペースの確保を優先するテナントが増えている。既存ビルの空室が枯渇しているのに加えて、新規供給が極端に少ないことも、テナントが早期にスペースを確保する背景となっている。
図2 大阪市内、延床面積1,000坪以上のオフィスビルの空室保有状況
まとまったスペースはあるのか!?
大阪市内のオフィスビルで300坪超の空室を保有するビルは27棟ある。ビルの棟数としては27棟あるが、基準階300坪以上の面積を単独階で確保可能なビルはわずか9棟である。さらに築年数が比較的浅いとされる2000年以降に竣工したビルは4棟。基準階300坪以上かつ2000年以降の竣工のビルは1棟である。従ってテナントは、規模と築年数やスペックの条件を優先した場合、複数のビルを検討して選択することはできない。複数階に分散、築年数の経過したビルでもやむを得ないと判断した場合のみ、辛うじて複数のビルで選択肢がある程度の状況だ。
図3 2018年3月までに入居可能な300坪以上の空室保有物件
まとまったスペースの状況
現状において、単独階で300坪以上の床を確保可能なビルは11棟のみと困難なため、連続階の2フロアまで広げ、かつ、築年数経過もやむを得ないと判断した場合、以下のプロット図で示す15棟となる。こうした中で、300坪を越えるさらにまとまった面積(500坪以上)を必要とするテナントにとって、どのような選択が可能であるか確認しておく。まず、単独階で500坪以上の面積を確保できるのは1棟のみである。連続階で複数階まで選択を広げた場合、8棟まで広がる(ピンクとライムグリーンのプロット)が、そのうち4棟は築年数がある程度経過しており、こうした物件を選択せざるを得ない。スペースの確保を余儀なくされたとしても、昨今、ビルの耐震性に加えて機能性を無視できないテナントにとってはこれらのビルを選択するのは難しい判断となろう。こうした中、現実的に500坪を越えるスペースを確保する必要があるテナントが検討できるビルは3棟(赤色の囲み)のみとなる。
大阪市 空室面積300坪超のオフィスビル特集はこちらをクリック
図4 大阪市内、連続階2フロアで300坪以上を確保できるオフィスビル
現状、テナントがすべき判断
テナントにとっては非常に厳しいマーケット環境は当面続く。需給はさらにタイトになり、賃料の上昇も進展するだろう。こうした状況の中で、テナントが判断すべきことは、第一にスペース確保の必要性と時期の見極め(現在の状況は向こう数年解消しない見込み)ること。第二に確保が必要な場合の優先順位を明確化すること。立地、規模、設備、グレードの全てを充足するビルは存在しないと認識した上で、明確にすることが重要である。最後に早期判断をすること。現在、業種、業態、企業規模を問わず幅広い企業がオフィススペースを必要としている。わずかなスペースを常に多くの企業と争奪しているといった認識を持つ必要があろう。
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