
上記グラフは、弊誌2009年冬季号で特集した「オフィス賃料相場温故知新」の東京主要3区大規模ビル賃料相場推移を、そのまま2013年夏の今季号まで連続させたもの。同データは弊誌AREA PAGE掲載の「賃貸不動産市場その動向と相場」に基づいており、前回の特集でも「毎回担当者が異なり、あくまでその時々の営業マンの相場感を強引に推移のグラフにしたもの」と断りを入れている。しかし、それでも極めてリアルにオフィス賃料相場の変遷を明示していると、掲載当時、読者から高い評価をいただいた。また、時代時代の需給バランスを捉える参考として、東京23区の空室率推移グラフ(対象オフィスビルは延床面積500坪以上の物件)の近似曲線を併せて記している。
さて、今特集「オフィス市況は底を打ったのか?」は、オフィス移転を計画する企業にとっても、またビルを開発・運営・運用する不動産デベロッパーや投資家にとっても、今、最も気になる“問い”ではないだろうか。特集の巻頭に当該グラフを掲載したのは、その答えを考える前に、これまでの賃貸オフィスマーケットの動向を復習しておきたいからだ。時の景況に最も大きく反応し賃料相場が上下動するのは、東京の主要ビジネス街の大規模ビルである。その意味から、現在のオフィス市況が底なのか否か、そして将来のマーケット像を予測する上で、まず把握しておくべき経緯だといえるだろう。
1997年頃、2000年頃、そして2006年頃に見られた賃料相場上昇期と、その後の終息。賃料レンジのグラフが作り出す山は、回を重ねるごとに高くなり、同時に広がるレンジの幅。2009年末から一定の賃料レンジ上限値と、4、5期毎に段々に低下してきた下限値。そして、これまでには見られなかった推移を示す7〜8%で継続する空室率。最新2013年夏季号、つまり今号では賃料レンジの上昇が示されているが、これは上昇局面に向かう確かな徴なのか。次ページ以降、東京各エリアの賃料相場推移、全国各都市の動向、そしてマーケット分析の専門家の見解から、その答えを紐解いていく。
グラフの見方、留意点
賃料相場レンジ
共益費込み賃料相場観のレンジ幅を赤色から黄色の帯グラフで表記。弊誌2008年冬季号までは、賃料と共益費を別の相場で記していたが(共益費は単価)、下限額と上限額に共益費を加え“共込み賃料相場”に統一している。また、1988年夏季号〜1993年夏季号は賃料相場も単価表示となっている。
空室率
3、6、9、12月期の東京23区空室率推移の近似曲線(延床面積500坪以上のビル対象)。なお、1991年以前(点線部分)は年1〜2回実施の調査値で対象はビル全棟となっている。