愛知県|経済産業局 革新事業創造部 スタートアップ推進課 戦略推進グループ 主事 榊原 高伸氏
大変革時代を乗り切る官民一体のスタートアップ支援戦略
愛知県は、大村秀章知事の肝いりで、2021年より日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」の整備を進めてきました。その起点となるのが、2018年10月に策定した「Aichi-Startup戦略」です。背景としては、CASEやMaaSなど自動車の技術変革が進む中、愛知県の産業が世界の潮流に取り残されてしまうのではないか、という危機感が県にありました。この大変革への対応として、スタートアップを起爆剤としてイノベーションを起こしていこうとするのがこの戦略です。
とは言え、県は助成金や条例等による環境整備に努めておりますが、実際にイノベーションに取り組んでいただくのは企業や金融機関、スタートアップ支援機関の方々です。そこで、戦略の策定にあたっては、地元の企業、大学、行政を含む様々なプレイヤーで構成された「Aichi-Startup推進ネットワーク会議」(2024年12月末時点、339団体6学識経験者)を立ち上げ、この推進体制のもと進めてきました。
この動きに合わせて県側の組織を見直し、スタートアップ支援に特化した部署として、私が現在所属するスタートアップ推進課が2019年に新たに立ち上げられました。
イノベーション創出に適した好立地 “ハコモノ行政”にしないための施策
Aichi-Startup戦略に基づき、インキュベーション施設を設立するSTATION Ai構想を発表したのは2019年9月のことです。この構想に至ったのは、世界のスタートアップ・エコシステム先進地域を調べていくと、そうした地域には中核的なスタートアップ支援拠点が必ず存在すると気づいたことにあります。例えばフランスには、昔の貨物駅を活用した「STATION F」があり、今では世界最大級のインキュベーション施設と呼ばれています。愛知県にもスタートアップが集う場所が必要だと考えたのです。
土地は、県有地を活用しました。JR名古屋駅から2駅の鶴舞駅徒歩6分の距離で、近隣にはサッカーコートや鶴舞公園、名古屋大学医学部や名古屋工業大学、日本福祉大学などがある文教地区です。
“ハコモノ行政”とならないように、運営は民間企業にお願いしました。PFI手法の一種で、公共施設の設計・建築と運営を民間企業 に委託するBTコンセッション方式を採用し、ソフトバンク㈱が建物を建て、愛知県が買い取ったうえで、ソフトバンク㈱に運営を委託する形を取っています。施設運営のためにソフトバンク㈱が設立したSTATION Ai㈱と県のスタートアップ推進課がともに作り上げてきたのが「STATION Ai」なのです。
事前の機運醸成施策が奏功、オープンから5年後までに1,000社誘致を目指す
「STATION Ai」は2024年10月にオープンしました。スタートアップと事業会社や大学を始めとするパートナー企業のオープンイノベーションを促進するため、双方の企業が入居している点が特長です。現在その数は、スタートアップ約500社、パートナー企業約250社です。
これだけの数のスタートアップを集められたのは、「STATION Ai」のオープンに先立ち、2020年1月から名古屋駅近辺のWeWork内で「PRE-STATION Ai」を開設し、スタートアップ支援の機運醸成を図ったからです。最初は9社からのスタートでしたが、「STATION Ai」のオープン前には426社もの集積があり、その多くが「STATION Ai」に移っています。内訳は製造業、アプリサービス、大学発スタートアップなどで、全国各地から集まってきています。中でも東京のスタートアップが全体の約4割を占め、愛知県のスタートアップは約3割程度です。一方のパートナー企業は約7割が愛知県の企業です。
各企業のニーズに合わせて利用していただけるよう三つの座席プランをご用意しています。フリーアドレスで自由に使えるコワーキング席、壁がなく開かれた空間の固定席、壁があり拠点として利用可能な個室席です。施設内を歩いていると、偶然の出会いから会話が始まったり、名刺交換したりする場面によく遭遇するので、そういったところからオープンイノベーションが創出されることを期待しています。
オープンから5年後である2029年までにスタートアップを1,000社に増やし、その後は新陳代謝を図りながら、爆発的に成長するスタートアップを育成していきたいと考えています。そして、スタートアップと事業会社等とのオープンイノベーションを促進し、グローバルイノベーション都市の実現を目指していきます。







