産業用地の減少に直面し、新たな支援の形を作る。
日本立地センターの取り組みとR&D拠点構築の今。
一般財団法人日本立地センター 産業立地部長 不動産事業部長 増川 邦弘氏
日本立地センターは産業立地の総合調査研究機関として、地域の実態に応じた産業団地適地調査や農村産業法の実施計画策定などの産業用地開発、企業アンケート調査や企業誘致フォロー、産業立地における人材育成のための研修会など産業立地にかかる支援事業を展開しています。
R&D拠点の選定において重視されるのは、研究開発の拠点を確保できる場所に加え、「優秀な人材の確保」と「研究者間の交流のしやすさ」を兼ね備えた立地です。かねてから神奈川県で研究開発機能の立地が進んでいる背景には、新幹線停車駅である新横浜駅周辺やみなとみらい地区、さらには羽田空港に近い川崎など、交通アクセスが良く、人材交流の結節点となる街の存在があります。特にグローバルな研究開発においては、国内外からの往来が容易であることなど、立地の優位性は重要な要素になっています。同じく神奈川県の藤沢市は、民間企業と連携し構想を進めている「藤沢市健康と文化の森地区」ならびに「慶應義塾大学湘南キャンパス」の存在が大きく、産学官連携の取り組みが地域の魅力を高めています。湘南エリアでは、バイオサイエンスやライフサイエンス関連企業の集積も進んでおり、今後、神奈川県下では、ロボティクスや水素技術など、新たな研究開発分野への展開も期待されます。
近年(2016年~2024年11月)の都道府県別研究施設新設数を見ると、過去統計の1998~2016年3月に比べ茨城県の伸びが突出。注目すべき事例として、秋葉原とつくばを結ぶ「つくばエクスプレス(TX)」沿線エリアの発展があります。TX開通に加え圏央道の整備と、同エリアは交通アクセスが飛躍的に向上。TX開通前はバスが渋滞した際は東京まで4時間を要していた移動時間が1時間程度まで短縮され、筑波研究学園都市の持つポテンシャルが一層高まりました。TSMCが産業技術総合研究所内に研究開発機能を設置したことは、この地域の発展可能性を示す象徴的な出来事でしょう。さらに、TX沿線では若い世代に人気の街も点在しており、研究開発人材の確保という観点からも注目を集めています。
産業用地を取り巻く状況に目を向けると、2005年時点で約900ヶ所あった分譲中の産業団地は、500ヶ所を下回る水準まで減少しています。この背景には、企業の旺盛な進出意欲があり、優良な立地条件を備えた産業用地への需要は依然として高いものがあります。このような状況を踏まえ、当センターでは経済産業省との協働により「産業用地整備促進伴走支援事業」を今年度より開始しました。本事業では、当センターの従来業務をさらに拡大させ、自治体向けの相談窓口設置、アドバイザリー事業、適地選定調査などを実施しています。
重要なことは、単なる用地供給にとどまらない企業ニーズに合致した戦略的な産業用地開発です。研究開発機能の立地は大都市中心部のエリアに限定されたことではなく、例えばマザー工場とも言われる拠点では新製品の開発だけでなく、効率的な生産方式の確立や、新技術の導入、他の工場の人材育成のための技術研修を継続的に行う重要な役割を担っています。そのため、研究開発機能と生産機能を両立できる広い用地が必要になります。大規模用地の確保の観点から、関東では茨城県、関西では滋賀県など交通アクセスの優れた広域なエリアにおける研究開発機能の立地が進んでいます。
全国的に産業用地開発に対する意識が高まっています。同時に、地域特性の強みを活かした、企業にとって事業拡大・成長の基盤となる産業用地の供給が求められています。また、研究開発機能に一番重要な「人材」に来ていただけるよう、戦略的な企業誘致を進めることが重要です。
当センターとしても、産業用地の創出、企業立地の実現、魅力的な地域づくりに向けて、国や自治体、開発事業者の皆様との連携を強化し、きめ細かな支援を展開していきたいと考えています。

