効率(JIT)から強靭性(JIC)へ:未曾有の危機がもたらしたパラダイムシフト
2011年頃より、インド物流市場はサプライチェーンの最適化と電子商取引(EC)の爆発的普及を背景に成長したが、最大の転換点は2020年に発生したコロナ禍だ。
物流網が混乱する中、各企業は戦略の抜本的な再構築に着手した。その結果、効率重視のジャスト・イン・タイム(JIT)から、在庫を確保するジャスト・イン・ケース(JIC)を併用するハイブリッド型アプローチへの移行が加速。在庫保持力と配送網を強化することで、長期にわたる供給遅延を回避するこの転換や、労働力確保等の課題により、多くの企業が自前主義を脱し高度な専門性を持つ3PLへ外部委託する動きが急速に強まっている。
今や3PLはインド物流エコシステムの基幹的地位にある。EC、自動車、製造業等の主要セクターに加え、医療品など高度な安全性とコンプライアンスが求められる専門分野でもその知見は不可欠だ。事実、2020年から2024年までの賃貸成約面積において、3PLは平均43%という極めて高いシェアを占めている。
本レポートでは、CBREレポート「2025 India Logistics Occupier Survey」の知見に基づき、3PLセクターがいかにインドの物流構造を変革しているかを詳説する。成長戦略から立地選定、テクノロジー導入まで、次なる成長への道筋を解き明かす。
3PLがもたらす「次なるステージ」
なぜインドの企業は、自社物流から3PLへの移行を急いでいるのか。その理由は、単なるコスト削減に留まらない、多面的なメリットにある。
現代の物流戦略において、3PLは単なる外注先ではなく、サプライチェーン全体の競争力を左右する戦略的パートナーへと進化を遂げている。特にEC市場の成熟や消費者ニーズの高度化が進む中、自社で物流網を維持するコストとリスクは増大し続けている。そこで注目されているのが、3PLが提供する「専門性」と「拡張性」だ。本稿では、高度なデジタル技術の導入から、地方都市へのネットワーク拡大、さらには返品対応といった複雑な課題に対し、3PLがどのように解決策を提示し、企業の成長を加速させるのか、〔図01〕では主要な6つの価値を紐解いている。
