前述の通り、供給ボリュームのみに着目した分析では、東京・大阪・京都のいずれのマーケットにおいても供給過剰の懸念は低いとみられる。とはいえ、供給されるホテルのタイプがビジネスホテルに偏っていることに鑑みると〔図表9〕、ホテルタイプによっては競争激化を惹起する可能性も否定できない。
CBREが把握している主要8都市の新規供給の92%は宿泊主体型※1のホテルであり、少なくともその5割近くはビジネスホテルが占めている。そのため、アッパークラスやフルサービスホテル※2であれば差別化が図られるだろう。また、消費者の嗜好がモノ消費からコト消費へとシフトしていく中で、宿泊先に対するニーズも変化は免れない。
ホテルは、単に宿泊するための「施設」としての機能だけでなく、宿泊そのものの「体験」の質を高める機能も求められるようになるだろう。例えば、ブランドコンセプトや内外装のデザイン、朝食の内容などで地域性や独自性を創出することや、ブティックホテルやライフスタイル型ホテルといった新しいタイプのホテルも、同じ宿泊主体型ホテルの中での差別化要素と言える。
今後はこのようなホテルの独自性や創造性によって集客力を高めるという差別化が、ホテル運営の鍵になるだろう。
※1 宿泊主体型ホテル:宿泊機能以外の付帯施設を限定、または最小限にした、宿泊を主体としたホテル及び宿泊に特化したホテル
※2 フルサービスホテル:レストラン、バンケット、フィットネス、スパ、ドアマン、ベルボーイ、コンシェルジュなどの多彩な施設とサービスを提供するホテル