各事業部門の知見やノウハウを集約し、ボトムアップでDX戦略を作り上げる
当社は2024年12月に「2030年に向けたDX戦略」を策定し、2025年2月には経済産業省から「DX認定事業者」の認定を受けました。このタイミングでDXに大きく舵を切ったというよりは、DXを確実に進めていく決意を公言したという位置づけです。DX戦略策定の前提として、2023年から進めている「長期ビジョン2030」「中期経営計画2026」があります。策定段階から、テクノロジーの進歩やDXによる競争激化を当社の課題として捉え、物流事業や機工事業においてデジタル技術の活用を戦略に織り込んできました。
DX戦略の策定プロセスにおいては、物流事業、機工事業、コーポレート部門からキーパーソンを約40名集め、複数のワーキングチームによる検討プロジェクトを結成。週1回のペースで当社のDX推進における全社的な課題解決策の議論を重ね、約2年かけて戦略を策定しました。各事業部門の戦略構想・知見・ノウハウを集約し、ボトムアップでDX戦略を作り上げていったのが特徴です。このようなプロセスを踏んだことで、物流事業と機工事業の間でも建設的な議論が可能になりました。例えば、物流事業でも用いようとしたテクノロジーを機工事業でも転用できそうだとわかったり、各部門で捉えている課題に実は共通する部分があることがわかったりするなど、連携が生まれるきっかけになりました。
当社のDX戦略では、2030年までに300億円を投じ、8種類の指標で進捗を測定する計画です〔図4〕。長期ビジョンに沿った成長戦略として、2030年までに総投資額1,900億円を計画していますが、そのうち300億円がDX関連の投資になります。デジタル化への投資は、成長戦略の重要な柱として位置づけています。当社のDXビジョンは「人 ×デジタルで、社会課題と顧客ニーズの変化に対応できるサービスにアップデートし、世界の産業の変革をサポートする」と定義しています。
現場リーダー以上8,000名にDXの基礎的知識を学ぶ、全社教育を推進
当社のDX戦略は3つの基本戦略から構成されています〔図5〕。第1の基本戦略は「デジタル技術を活用したサービスのアップデート」で、顧客に応える・顧客と繋がる・顧客と超えるという3つの視点から、提供価値を高めることを目指します。第2の基本戦略は「業務プロセス革新によるパフォーマンス向上」で、時間を創る・仕組みを変える・知見を集めるという観点から、自社の業務効率化を図ります。第3の基本戦略は「DX推進態勢の確立」で、デジタル人材の育成、IT・データ基盤の整備、変革を促す仕組みづくりを通じて、DX推進のための環境整備を行います。
DX推進の鍵を握るのが人材育成です。2030年までに全社員のうち8,000名を対象に、DXの基礎的知識とリテラシーを習得させる教育を推進しています。これは、企業全体でDXを加速させるための重要な取り組みであり、業務やサービスのあり方を見直す変革の一環です。さらに、DXを実際に推進していく専門人材を450名育成する計画です。対象は経営層から現場のリーダー層まで幅広い層をカバーしており、すでにeラーニングなどを通じた教育が始まっています。また、DX推進の環境整備として社内コミュニケーションの変革も図っています。社内の様々な部署や地域で行われているDX関連の取り組みを共有するため、デジタル上の情報交換プラットフォーム「DxS(ディー・クロス)」を構築しました〔図6〕。一例をあげると、ショート動画を活用して取り組み内容やナレッジを共有することで、社内の異なる地域、部門間の社員が「ちょうど私が今、改善したいことだ!」といった、気付きを与えるとともに、取り組みの水平展開を促進するきっかけづくりに力を入れています。
当社は今後、DX戦略に基づいて3つのフェーズで変革を進める計画です。フェーズ1では現場でのツール活用やデータ分析環境の整備からスタートし、フェーズ2では顧客と自社のシステム連携やデータ連携を強化。フェーズ3では業界内連携や新ビジネスモデル創出を目指しています。この使命を果たすためにも、デジタル技術の活用が重要になります。物流分野において、どのプロセスのデジタル化が可能か、逆に人的要素が必要な領域はどこかを明確に識別することで、働く人を値をもたらす企業として、存在意義を示していくことができると考えています。当社は物流サービスのデジタル化を通じて、「人が働くことの価値を最大化する」という目標を掲げ、これまでの枠を超えた、新たな価値創造に挑んでいきます。
また、こうした取り組みは社内にとどまらず、取引先や業界全体への波及効果も期待されています。デジタル技術を活用した連携や共創を通じて、より持続可能で強靭なサプライチェーンの構築にも貢献していきます。DXを通じて社会課題の解決にも寄与する企業として、当社はその存在意義をさらに高めていきます。
そして何より重要なのは、社員一人ひとりが変化を前向きに捉え、自ら学び、挑戦する姿勢を持つことです。DXは一過性のプロジェクトではなく、企業文化として根付かせていくべきものです。山九株式会社は、全社員が主体的に関わることで、真の意味でのデジタル変革を実現していきます。





