「2024年問題」は単なるきっかけ。拠点配置を定期的に検証し、どれだけの無駄があるかを明確に。
船井総研ロジ株式会社 ロジスティクスコンサルティング部 チーフコンサルタント 小倉 裕太氏
大手食品メーカーの物流委託会社コンペおよび新規倉庫立上げ支援、大手電気機器メーカーの荷役コスト・配送コスト妥当性評価、ECアパレルのマテハン導入妥当性検証&導入支援などに携わる。また、大手食品メーカーの新規倉庫立上げ支援では、5000坪越えの大型センター立上げを担当。常にお客様の目線に立ち、何度も現場に足を運び、机上の空論ではなく、具体的かつ現実的な解決策を提案している。船井総研ロジの会社HPはこちら
「2024年問題」で浮かび上がった、拠点配置検証の重要性
これまでの物流戦略において、拠点配置が最も重要な要素の一つとされてきたのは周知の通りです。そうした中、いわゆる「2024年問題」により、ドライバーの長時間労働が抑制されたことで、ドライバー1人当たりの輸送距離が短縮し、結果的に輸配送の担い手不足につながりつつあります。これに伴い、運べる荷物の容量も減少し、これまで設計されていた拠点間・拠点から顧客への距離では輸配送網がカバーしきれない事態に陥る可能性が顕在化しています。
輸配送が滞るのは大問題であるとともに、荷主にとってはコンプライアンスも同様に重要です。今後に備えて早くから対策を取る企業がある一方、違反に対する取り締まりが不明瞭な分、様子見をする企業が残っているのも現状でしょう。
いずれにせよ拠点配置に影響が出るのは自明の理ですから、あらゆる企業にとって、物流拠点の再配置を検討する必要性が出てきます。なぜなら、物流の根幹を担う重要要素であり、どんな立地に、どれだけの規模の、どんな機能を持つ拠点を、どれだけ確保するかによって、その物流網が発揮するパフォーマンスに大きな差が出るからです。また、こうした配置の重要性は、内部・外部の変化という時流によって適正度合いが大きく変化します。そのため、1年単位で見直す・検証することが理想ですが、最低限3年から5年、荷主と物流会社の契約が変わるタイミングで行うのが合理的かもしれません。しかし、これまでは何か問題が発生したら検証するという「対処療法的な見直し」が多く、我々のようなコンサルタントに提案されて、初めて見直しを考えるといった企業がほとんどです。荷主の物流担当者や物流会社は日々の管理・運営能力に長けているものの、戦略的に物流拠点を管理・改善する機能があまり強くありません。そういった意味で、今回の「2024年問題」は、物流拠点を戦略的に捉える大きなきっかけになっていると言えるでしょう。
拠点配置検証の具体的段取りの整理
●出所:船井総研ロジ

検証実行の最重要ポイントは、自社のあるべき姿を明確にすること
実際に拠点配置を検証する上で最も重要視すべきポイントは、言うまでもなく自社事業において最適な拠点配置を見つけ出すことです。ここでいう最適とは、企業が実現したい姿や経営戦略・コンセプト・目的等に最も適しているということ。つまり、最適は企業によって異なり、企業ごとのオリジナルを明確に定義して、それに基づいて現状と対比して、是非の検証を進めることが求められます。
拠点配置検証の具体的な段取りとしては、1.経営戦略に基づいた物流戦略を策定、2.それに基づく拠点配置コンセプトの整理、3.拠点配置検証の段取りやスケジュールの整理、4.既存物流網の現状把握、5.コンセプトと現状のギャップの整理、6.ギャップを踏まえた仮説案の策定・整理、7.要件・制約条件・評価軸の整理、8.仮説案の検証実施、9.仮説案の評価・比較検討という順に進めていきます。要は事業としての目標を明確にし、目標を実現させるためには、物流拠点として、どんな機能の拠点が、どこに、どの規模で必要かを整理します。現状物流網と比較してギャップを明確化し、それを踏まえてコンセプトを実現できる仮説を立て、シミュレーションしながら評価・検討していくことになります。
この中では現状把握において、定量(数値)及び定性(情報)をどれだけ正しく捉えられるか。制約条件は何か。仮説立案のためにコストだけでなく、どれだけ多くの視点で検証するか、といった点には特に注意が必要です。
膨大な選択肢の中から最適を見出す、荷主における拠点配置の難しさ
しかし、この作業には困難が付きまといます。なぜなら拠点配置は、何か一つの最適解を突き詰めると、必ず他の部分で不利益が生じる構造になっているからです。例えば、拠点立地が配送距離の観点で最適でも、拠点コストが高くなりコストバランスが悪くなる。その逆に、郊外に拠点を構えることで拠点コストが廉価になっても、顧客までの配送距離が長く、配送コストが高くなってしまったり、サービスレベルが低下したりします。このようなトレードオフの関係が至る所で生じてしまうわけです。また「2024年問題」に絡んで、サービスレベルの観点として当日配送や翌日配送、再配達といった業務の見直しが取り沙汰されていますが、一方では他企業との差別化を図る戦略ともなり得るため、拠点配置に大きな影響を及ぼすファクターとなってきます。
こうした中、荷主が頭を悩ませるのが選択肢の多さと複雑さでしょう。例えば、CVSであれば、どれだけ素早く店舗に供給できるかという、輸配送におけるリードタイムは重要です。出荷先がどこにあって、そこからの距離や1拠点でどれだけの店舗を管轄できるか、あるいは拠点から各店舗までの距離が平均何キロ以内でなければならないなど、考慮すべきポイントはいくつもあります。
物理的拠点の観点では、仮に最適と決めた立地に必要な機能を備えた倉庫がない場合、自前で建てるのか、委託先の物流会社に建ててもらうのか。それともコストや時間を考えて近隣の賃貸物流施設を借りるのか、借りるとしてもどこにするのか。庫内業務は自社で行うのか、それとも委託するのか。委託にしても全部なのか一部なのか。どの選択がベストなのかを決めなければなりません。
このように性質の全く異なる項目における選択肢の多さが、検証を複雑にし、なかなか踏み出せない要因の一つと言えるでしょう。
拠点配置検証の全体像
●出所:船井総研ロジ

検証結果の遂行には企業パワーが必要、どこまで実行するかの見極めも重要
ここまで拠点配置検証についてお話してきました。仮説検証までできれば、先の道筋はできているので、あとは実行に移すのみとなります。しかし、多くの企業に関わってきた実感として、検証した結果を実行に移すことはさらに難しいものであるのも事実です。実際には仮説立案にとどまってしまう企業が少なくありません。実行するにはリソースに余力があり、時間と労力をきちんとかけられるか、具現化のパートナーとなり得る物流会社や不動産会社との人脈があるかといった点も必要です。
また、実行のゴールをどこに設定するかも難しいところです。先に触れた通り、最適な拠点配置は時流による影響が大きいため、どこをターゲットに置くのかも大きなポイントです。今後も、「2024年問題」のような業界に大きな影響を与える事象が発生した場合、現時点で考えていた仮説は意味がなくなってしまう可能性もあります。
だからと言って、「物流は日々、問題なく動いているから、現状維持でいいじゃないか」と言うとそうでもありません。現状、どれだけの無駄があるかを明確にすることが検証の目的であり、必要性です。状況を知った上で、すべてでなくてもどこまで対処するのか、どうやって無駄をなくすのかを見極めることが、重要ではないでしょうか。
船井総研ロジ株式会社は、物流戦略の策定から倉庫の現場改善、物流コストの抑制など、企業の高度な物流体制構築を支援する日本最大級の物流コンサルティング会社。荷主企業(製造業・卸売業・小売業)の物流責任者が集まる情報交換コミュニティ「ロジスティクス・リーダーシップ・サロン」を運営している。船井総研ロジの会社HPはこちら
