賃料水準、空室率、新規供給量――。ここではCBREリサーチによる全国主要7都市のマーケットデータをベースにしつつ、テナントをはじめとした市場関係者へのアンケート調査などに基づくミクロな視点も織り交ぜ、各都市の近年の市場を振り返るとともに今後の展望を分析する。
マーケットの大きな転換点となった新型コロナウイルスのパンデミック。その直前から現在に至るまでの市場を読み解く上で、とりわけ重要なファクターとなるのがテナントサイドの「意識の変化」だ。
かつてのアベノミクスに始まる異次元の金融緩和、そして好調な企業業績などを背景として、 2020年初まで、新規供給や既存ビルの空室の発生があれば、早めに床を確保しようとするテナントサイドの旺盛な需要が続いていた。しかし、その後のコロナ禍により需要は減退。特に大きな要因となったのは、都心部における大手企業の動向である。これまであまり顧みられてこなかったオフィスの余剰スペースなどを見直し、部分解約する動きが相次いだ。それと同時に、コロナ禍による業績悪化などを背景として、中小企業においても減床へと踏み出すテナントも増加した。こうした傾向が顕著だったのが、東京・大阪・名古屋の3大都市であり、2022年から2023年にかけて、いずれの都市も空室率上昇や賃料の調整が、一旦のピークを迎えている。
だが、2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行、行動制限撤廃などをきっかけとして、徐々にオフィス回帰への揺り戻しが見られるようになってきたのが、2024年Q2までに至る直近のマーケットだ。とりわけ築浅・大規模かつ好立地のハイグレードビルが選好され、空室消化が進むようになった。こうした動きはオフィス市況全体の持ち直しをけん引し、緩和一辺倒だった需給に変化をもたらしている。
このようなハイグレードビルへの移転動機は、従業員のエンゲージメントの向上、コミュニケーション活性化を狙った拠点集約、ハイブリッドワークへの転換など様々。しかし、それらは概して「人的資本経営」「DX」「サステナビリティ」といった経営の新たな潮流に沿ったものであり、弊誌でもその先進事例を幾度も取り上げてきた通りだ。コロナ禍を機にオフィス戦略を見つめ直すと同時に、賃料の調整による値ごろ感から、かつて耳目を集めた“近・新・大”を志向するトレンドが、再び現れ始めている。
ただし、空室率が全体的に引き上がったことで、入居候補となり得る物件が増加。さらに、ある程度の人員増であれば、テレワークで対応できるようになった。そのうえ昨今高騰している入居・原状復旧工事費に鑑みて、オフィス移転そのものを慎重に検討する企業も現れている。移転に至らず、現在入居するビルで館内増床する事例も多数見られるなど、オフィス戦略を実行に移す上で、取り得る選択肢が増えた。このような背景から、テナントサイドは、物件をより多角的な視点から吟味するようになっている。卑近な言葉で表すならば、オフィス市場において“賢い消費者”が増えてきたわけである。
さて、以上のようなトレンドを踏まえたうえで、今後のマーケットはどうなるのか。概観してみると、本稿で取り上げている主要都市の大半が、過去平均を上回る大量供給期を迎えており、新規供給の見通しが、これまで以上に市場の動向を左右するだろう。以下、都市ごとに解説したい。
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