050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

日系企業の海外進出動向とその背景

急激に増加する日系企業の海外進出

日系企業の海外、特にアジア地域への生産拠点の進出や拡張といった 記事が、連日のように新聞紙上をにぎわせている。こうした動きは、なに も今にはじまった事ではない。かねてより、メーカーでは低コストの労働 力を求めて、生産拠点を海外に移転する動きはあった。

図表9:日本企業の海外事業展開のトレンド(震災前)

ここで、一つのデータを見てみよう。【図表9】は2010年に日本貿易振 興機構(JETRO)が、日本の製造業、商社・卸・小売業を対象に行った、海 外事業展開についてのアンケートの結果である。

これによると、2007年には「事業規模の拡大を図る」企業が66.4%で あったものが、翌08年には52.8%に減少している。その原因はリーマン ショックにあるわけだが、翌09年には60.1%、10年には74.3%と、07年 までを上回る企業が、海外での事業規模を拡大するとしており、今後は もっと増えるだろうと予想されている。

なぜここまで日系企業が積極的に海外進出に乗り出そうとしているの か。その実態を探ってみたい。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

日系企業が直面する"六重苦"の経営環境

昨今、経済界では、日系企業を取り巻く経営環境の問題点を、その数か ら"六重苦"と表現している。いわく、超円高、FTA(自由貿易協定)、 法人税、労働規制、温暖化対策、震災以降の電力不足の6つが それに当たる。これらのいくつかについて、簡単に説明しよう。

超円高

2011年11月初旬の為替レートは、1米ドル=78円前後、1ユーロ= 107円前後で推移している。2007年~08年当時が1ドル=120円くら いだったことを考えると、"超円高"ともいえる大幅な円高傾向が進ん でいることになる。
この差は非常に大きく、例えば1ドル=100円のときに1,000万円の 売上となった製品が、現在では780万円にしかならず、特に輸出が多い 企業にとっては、これだけでも死活問題といえるほどの大きな影響が 出ているのである。

FTA(Free Trade Agreement =自由貿易協定)

FTAは海外との輸出入に関して、物品の関税、サービス貿易等の障壁等、通商上の障壁を取り除くための協定であり、一言で言うと貿易に関する関税を撤廃しようというもので、世界的なトレンドになっている。

中でもアメリカと韓国が関税の撤廃について積極的であり、これが実現すると、例えば韓国がアメリカに物を売ると関税がかからないが、日本とアメリカの間では関税がかかり、韓国企業の価格競争力が大幅に上昇することになる。

現在、世論を二分しているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)もこの一環であるが、参加の是非について日本政府の対応としては、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議において、交渉に参加する方針を表明した(2011年11月14日現在)。

経済産業省は、TPPに参加すれば関税が撤廃されることで日本のGDPは増加するが、しない場合は韓国が躍進する影響で大幅に減少すると予想している。

一方で、農林水産省は、農業関連のGDPが減少するだけでなく、環境面でも損失が発生し、また雇用が失われ、食料自給率も大幅に低下するという見解を示している。

政府の中でもこれだけの意見の違いがあるために容易に結論が出ないわけだが、主にメーカー系の企業の立場に立つと、TPPあるいはFTAに参加しないと、海外企業との競争力が低下することは明らかである、と言っても過言ではないだろう。

法人税

アジア主要国における法人税の実効税率を比較すると、日本は 40.7%と非常に高く、企業にとっては厳しい状況となっている。シンガ ポールは18.0%、香港は16.5%であり、世界平均の25.5%、APAC 平均の27.5%と比較しても格段に高い。

一方、海外企業を誘致しようとする諸外国では、誘致後の数年間は 法人税を免除するケースが多い。反面、日本に海外企業を誘致する場 合は、この法人税40%が大きなネックになって、外資がなかなか入っ てこない状況にある。

先に挙げた超円高も加わって、海外への本社移転を検討する企業さ え出てきているのである。

労働規制

2008年のリーマンショック後、景況が急激に悪化し、いわゆる派遣 切りなどが社会問題化したことを背景に、2009年に誕生した民主党政 権により、「労働者派遣法改正案」が提出された(現在も継続審議中)。 これは、派遣法を厳しくすれば正社員が増え、雇用が安定するとの考え に基づいたもので、その概要は、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣 の原則禁止、最低賃金を時給1,000円、となっている。

だが、企業の視点で見ると、繁忙期には人員を増やし、暇なときには 少なくしたいわけで、いわば雇用の柔軟性を低コストで維持したい、と いうのが本音だろう。

しかも、労働コストについて言えば、ベトナムは日本の約10分の1 と、比較にならないほど人件費が安いという現状がある【図表10】。つ まり、日本で物を作るには、特に付加価値が低いものに関してはかなり 厳しい環境になっており、大手メーカーはもちろん、地方の中小企業で あれ、国内での生産活動は難しくなっている。

さらに最近では、こうした六重苦に加えた「+1」として、世界的な株安 により、企業経営は大きな痛手をこうむっている。これらのトレンドは、短 期的には修正できるものではない。こうした現状を考えると、国内企業は 望まなくても海外に進出せざるを得ない状況にあると言えるだろう。

 

加速する新興国への海外拠点進出、特に注目されるインド

 かつて、海外進出といえば中国が注目されていたが、現在では新興国、 特にインドへの拠点移管が目立ってきている。では、なぜ今インドなの か。中国との比較を通してその理由を説明してみたい。

まず、人口を比較すると、現在、中国が約13億人、インドは約12億人だ が、2026~30年くらいまでの間にこの数字が逆転すると言われている。 その背景にあるのが中国の「一人っ子政策」である。この影響により中国 の人口増加率は抑えられる一方、そういった政策の無いインドでは人口 増加率が中国を大きく上回ると予想されている。近い将来、インドの人口 が世界一になることは確実とみられ、その潜在的購買人口は相当なボ リュームになるだろう。

また現在、GDPは中国の約5兆ドルに対してインドは約1.2兆ドルで ある。一人当たりに換算すると中国は4,000ドル弱、インドは1,000ドル になる。一般論として、一人当たりのGDPが1,000ドルを超えると、バイ クが売れるようになると言われている。事実、GDPがインドとほぼ同じパ キスタンには、日本のバイクメーカーが進出し、拡販を計画している。一 方、インドを見ると、もちろんバイクは売れているが、それ以上に自動車 が売れている。それは1台2~3,000米ドルという、廉価な自動車が販売 されていることに加え、インド人の、特に中間層の所得が急増しているこ とが背景にある。

なぜ所得が急激に増えているかというと、外資系企業が、インドの莫大 な購買層をターゲットにすでに進出しており、工場を稼働させ、そこで働 くインド人が増え、そのために収入が増え、それが購買に回るという循環 が成り立っていることが挙げられる。

一方、貿易収支について見てみると、中国が2,000億ドルの黒字であ るのに対して、インドは1,081億ドルの赤字となっている。インドは石油 が採れないにもかかわらず、海外からの工場進出で石油の需要が増え、 また自動車の台数が増えているといった状況の中、石油を全面的に輸入 に頼らざるを得ないからだ。

もう一つの理由は、現在進出しているメーカーのほとんどが、現地の 購買力を当てにした、いわば国内向けの生産活動を行っていることだ。 つまり、ここが世界の製造工場といわれる中国との大きな違いであり、 そのために貿易収支は大幅な赤字になっているのである。

だが、今後については、中間層の所得が増えていることで、インド経 済は急速に拡大していくだろう。しかも、現地生産の製品の品質が向上 すれば、現在の中国から、輸出製品製造の拠点がインドに移ることも考 えられる。こうして力をつけたインドがFTAに参加して、外貨を潤沢に 獲得できるようになれば、国自体の競争力が飛躍的に向上することは 間違いない。

以上が、インドが今、海外企業から注目されている大きな要因で ある。

新興国進出で必要とされる"経験の蓄積"

シービー・リチャードエリスのグローバルコーポレイトサービス部で は、日系企業が海外進出するに当たっての不動産ソリューションサー ビスを提供しているが、今までは現地の工場を売却したいという話は あっても、土地や工場の取得に関するニーズは少なかった。それは、大 手企業においては、長年の間に海外不動産取得のノウハウが蓄積さ れていたからに他ならない。

だが、近年の新興国への進出に際しては、企業が土地の候補を見つ けた後、その土地を取得するまでのプロセスをマネジメントしてほし いという問い合わせが多くなっている。

インドを例に取ると、かつては土地の利用者が、その所有権を持っ ていると考えられていた。しかし、イギリスの植民地になった際、土地 制度が変更され、利用者(小作人)から税金を徴収するようになる。さ らに、1954年の農地改革では、利用者と政府との間で賃貸借契約(借 地権)を結ぶに当たって、面積の上限設定を加えた土地の再配分、つ まり、たくさん持っている人から取り上げて少ない人へ分配するとい う制度が実施された。この政策への不満が農民の間には根強く残って おり、土地の売買に関しての訴訟問題が、現在も後を絶たない。

事実、インドの各州政府や諸外国のディベロッパーは積極的に農地 を購入し、工業団地にして転売しようという動きが活発だが、こうした 歴史的背景に裏付けられた訴訟問題が絡むことが多い。しかも、日本 と比較して土地の所有権に関する管理が曖昧なことが、不動産取引の 複雑化、長期化に拍車をかけている。

インドに限らず、新興国と呼ばれる国では、多かれ少なかれ、海外の 土地取得における従来の常識では対応できない問題が起きているの である。

だが、これらのリスクを差し引いても、進出によるメリットが大きい ことも明らかな事実。それだけに十分なデータと、課題解決のための 多くの経験とノウハウ、さらに現地にネットワークを持つパートナーを 確保することが、海外進出成功の鍵となることは間違いないだろう。

お問い合わせ

柴田 雅広

シービーアールイー
柴田 雅広
masahiro.shibata@cbre.co.jp

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2011年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム