TPPとは、環太平洋地域の、経済の自由化を進めるためのルールを構築する連携協定である。このような協定には、これまでも、関税撤廃を目的としたGATT(貿易と関税に関する一般協定)や、1995年に設立されたWTO(世界貿易機関)などがあった。だが、先進国と新興国の間の対立により、事実上の停止状態に陥ることになる。
一方その補完として、比較的交渉が進みやすい2国間の交渉によるFTA(自由貿易協定)や、日本とシンガポールをはじめとする国々におけるEPA(経済連携協定)などを締結するといった動きが出てきた経緯がある。こうした流れが、次第に大きな地域へと広がっていったものの1つが、今回のTPPである。
TPPの交渉がスタートしたのは2010年3月だが、日本が交渉に参加したのは2013年2月になってからだった。日本はこれまで、自由貿易では他国に後れを取ってきたが、TPP参加により、国内企業の競争環境の改善に向けた期待が一気に高まったと言える。
現在、TPPに参加を表明しているのは日本の他に米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、豪州、ニュージーランドの11ヶ国となっている〔図表1〕。
この規模を、すでに実施している世界の主要FTAと比較してみよう〔図表2〕。米国、カナダ、メキシコの3ヶ国が加盟するNAFTA(北米自由貿易協定)の2014年におけるGDPは20.5兆ドルである。同様にシンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイを含む10ヶ国で構成されるASEAN(東南アジア諸国連合)は2.5兆ドル、28ヶ国が加盟するEU(欧州連合)は18.5兆ドルとなっている。これに対し、TPP加盟国における2014年のGDPは28.1兆ドル、日本円に換算して3100兆円にものぼる。これは世界のGDPの約4割に当たり、締結されれば最大規模の経済圏が創出されることになる。また、人口で見ても、世界の10%に当たる8億人の巨大市場であり、日本の約8倍もの市場が目の前に広がるのだ。
加えて、今後の成長性を見ても、IMFの試算による日本経済は、2020年までのGDP成長率は7%程度、人口は2%減少となっている〔図表3〕。これに対してTPP参加国の経済圏は24%の成長、人口は5%の増加が見込まれている。さらに、韓国やタイも参加を積極的に検討することを明言しており、そうなれば市場規模はさらに拡大することになる。