従来の経済協定が、関税の撤廃に重点が置かれていたのに対して、TPPでは国境を越えた経済活動を円滑にするための、共通ルールを設定しようとする点に大きな違いがある。〔図表4〕に示したとおり、交渉分野は全部で21あるが、なかでも下記の5つが、物流との関連性が高いと言える。
1.物品市場アクセス
物品の貿易に関して、関税の撤廃や削減の方法等を定めるとともに、内国民待遇など物品の貿易を行う上での基本的なルールを定める。
2.原産地規則
締結国の原産品とみられるモノについては関税の減免の対象となるというルール。
3.貿易円滑化
貿易規則の透明性の向上や貿易手続きの簡素化等について定める。
4.電子商取引
国境を越えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量的規制等の貿易制限的な措置に関するルールを定めるとともに、市場アクセスを改善する。
5.物品市場アクセス
eコマースのための環境整備
つまりTPPは、アジア・太平洋圏を自由で公正な「1つの経済圏」として、貿易における関税の削減・撤廃だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業、労働、環境の規律など幅広い分野の新しいルールを構築するものである。
現状の世界経済を見ると、中国経済の鈍化やEUの不安定な状況下にあって、輸出入ともにマイナス基調の頭打ち状態にある。我が国においても、経済成長率1%と低迷し、人口も減少傾向が加速している。こうした状況の中、TPPへの参加は、前述の巨大市場に容易にアクセスが可能となる。そして貿易・投資が促進されることで、巨大市場の需要に値するイノベーションが生まれ、新たな商品やサービスを提供するグローバル・バリューチェーンが様々な分野で構築されるだろう。これにより、国内産業への投資や高付加価値化が進み、生産性を向上させることで、我が国のGDPを押し上げることが期待されており、アベノミクスの成長戦略の切り札となるものである。