使用面積の圧縮=コスト削減は当然だが、安易なABWの導入にはリスクが伴う。
オフィスコストの削減を目的の一つとして、オフィス移転を機にABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の導入を検討する企業が増えている。在宅勤務と併用することで、人員に対する使用面積を少なくすれば、オフィスのイニシャルコスト・ランニングコストともに削減を図れるのは当然だろう。しかし、専門家の手を介さないABW導入は、様々なリスクを伴う。以下、その主なリスクについてまとめてみる。
空間設計の失敗
ABWは、多様なワークスペースを適切に配置することで、その効果を最大限に発揮する。専門知識がない場合、従業員の活動内容や潜在的なニーズを十分に把握できず、目指すべき働き方を促進できない空間設計になる可能性があるだろう。例えば、席が足りない、会議室が足りないという問題は、活動実態に合ったスペース配分になっていないケースが多く、また、集中スペースが不足したり、コミュニケーションスペースが狭すぎたりすると、従業員の満足度や生産性が低下し、エンゲージメントや人材の維持と獲得に影響する恐れが想定される。
IT環境の不備
ABWには、場所を選ばずに働けるIT環境が不可欠である。ワークプレイスに対する専門的な知識がない場合、セキュリティ対策やネットワーク環境の整備が不十分になる可能性がある。その結果、情報漏洩や業務効率の低下を招く恐れがあるだろう。また、コミュニケーションをサポートするITシステム(位置情報システム等)の導入も注目されている。
社内制度設計の不備
ABWは従業員の自律性を高める働き方だが、適切なルールや制度がなければ混乱を招くことがある。例えば、席の予約方法や利用時間のルールが曖昧だと、従業員間のトラブルや不公平感が生じる恐れもあるだろう。またABWの導入と同時に、社内の評価制度やコミュニケーション方法の見直しも必要となり、このバランスを間違うと、従業員のモチベーション低下や不満につながる可能性が出てくる。
従業員の適応不足
従来の働き方と大きく異なるABWには、社員が適応するまで時間がかかることがある。社員に向けての説明会やワークショップの開催、研修、個別相談などを通じたスムーズな移行が必要となるが、これが的確に実施されないと、社内に不安や不満が募ったり、ABWが定着しないことも考えられる。
コスト削減効果の低下
ABWは、オフィス面積の圧縮によりコスト削減効果が期待できるが、適切な設計や運用ができなければ、期待した効果が得られない可能性がある。例えば、スペースの有効活用ができていなかったり、IT環境の維持費が高くなったりすると、かえってコスト削減効果が低下する恐れも出てくる。
中長期的な視点の欠如
ABWは、一時的なコスト削減だけでなく、従業員の目指すべき働き方を定義し、満足度向上や生産性向上、組織の活性化など、中長期的な視点を持つことが大切である。企業のビジョンや目標に合わせて、最適なABWを提案し、持続的な効果が得られるよう常にサポートやフィードバックが必要である。この的確な運用がなされないと短期的なコスト削減に目が向きがちとなり、中長期的な視点が欠如する危険性がある。
まとめ
プロフェッショナルの手を介さないABW導入は、様々なリスクを伴う。コスト削減だけでなく、従業員の働きやすさや生産性向上、組織の活性化、エンゲージメントや人材の維持と獲得など、ABWの目的を十分に理解し、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要であろう。



