オフィス移転計画そのものの中止や、居抜きや分室での対応、これまでの常識が通用しないB工事、困難さを増すスケジュール管理と、建築コスト上昇下のオフィスマーケットでは様々な事象が起こっている。
ほぼ契約締結という段階で遅れに遅れていたB工事の見積りがやっと提示されたが、想定の倍額という高額さで移転計画自体が中止になってしまった。
コスト高からオフィス全体の移転をあきらめ、人員増を館内増床や分室で補うケースが増えている。当初から一時的な対応と割り切っているため、グレードを低く抑えることが多く、社内格差からエンゲージメントへの支障も考えられる。
賃料が低廉なビルや敷金が少額なビルなど、工事費高騰から保証金・敷金で原状回復費用が担保できなくなってきている。賃料改定とともに保証金の追加を交渉するビルオーナーも。それまでは賃料のみ〇ヶ月の保証金だったものを、共益費込みに変更するなどの対応も。
これまで、B工事の施工でスーパーゼネコンを指定業者としてきたビルでも、その縛りが緩くなってきた。それどころか、 B工事業者が受注できないとC工事業者に依頼することも。慣れないC工事業者施工のため、かえって高額になったケースも見受けられる。
コロナ禍やその直後はオフィスの将来像が不透明だったため少なかったが、最近は新築ビル建設での竣工前テナント入居工事の要望がテナントとオーナー双方の工事費削減対策として増えている。ただし、かなり先の計画を事前に決定する必要があり、実施のハードルは高い。
入居時、会計上の目的で取った原状回復の見積りがあり、3年後の契約更新時に退去を計画。3年前の原状回復の見積りでコストを目算していたところ、あまりの額の違いに予算が大きく狂った。
定借期間を1年半残して退去するテナント。オーナーとの交渉で居抜き退去を了解してもらったものの、1年半かけて後継テナントを探すか、それとも1年半後の原状回復工事費上昇を見越してすぐに工事に着手すべきか、判断に迷っている。
分室などの短期使用や成長著しいベンチャー企業など、オフィス家具・什器のリユース、リース、サブスク等の利用度合いが高まっている。三菱地所の「エコファニ」等、デベロッパーのテナントサービスも登場。什器メーカーも長期使用を見越し、保守期間を10年等長期に設定し始めている。
現オフィスの退去時期は決まっているが移転先の手配が間に合わず、一時移転先・スイングスペース確保の話を耳にするようになった。背景はもちろん建築費高騰で、交渉の長期化・難航、工期の遅れが原因。
入居にあたりスプリンクラー設置が必須なテナントで、このような基本的な設備さえ入手できない。発注しないと納期が回答されないといった製品も。半導体関連の建築資材は特に不足。部材の先行発注が必要とされるケースも増えているが、テナントによっては承認スキームがなく調整が困難に。
コスト管理・スケジュール管理とこれまでの経験が通用せず、難易度が高まっている。企業における総務のスリム化も相まって、社内調整等を担う企業側の移転担当者の疲弊度も相当に高まっている。
コストもそうだが、入居も原状回復もスケジュールを立てるのが一苦労。ビル建設で竣工前入居工事を行う場合は行政への届け出が必要なのだが、いつできるか工事スケジュールが不明確で予定が立たない。
一度つくったオフィスを長く使おうと、テナントは5年10年といった長期の定借契約を希望してきている。ただし、現在のひっ迫した市況下では賃料の先高観が優勢で、オーナーサイドの意識との乖離が見られる。
再開発計画エリア内にあり、取り壊し予定のため原状回復義務を免除してきたビル。開発延期で居抜きで募集されることになったが、建築費高騰から一定のニーズを集めている。
知っトクWord
入居工事●A工事:施工者の選定や費用負担を貸し主側が行う工事。建物の躯体や共用施設に関わるものが主な対象。基本的に、借り主が関与することはない。●B工事:借り主側の要望により、借り主の費用負担のもと実施する工事だが、施工は貸し主の指定する事業者が行う。電気・空調設備など、建物全体に影響を及ぼす工事が主となる。●C工事:借り主側の費用で、借り主の指定する施工者が行う工事。什器や通信設備の配置など、基本的に入居後に施工するものが対象。
賃貸借契約●普通借家契約(普通借):契約更新を原則とする賃貸借契約。貸し主からの解約には正当事由が必要。契約期間は2年間が一般的。●定期借家契約(定借):契約期間満了により、確定的に契約が終了する賃貸借契約。契約期間は3~5年間が多く、その間は解約不可。