しかし、2017年からホテルマーケットは転換点を迎えつつある。高い稼働率を維持するためにホテルオペレーターが客室単価を調整する動きが一部で見られるようになった。その背景として、客室単価の上昇に伴う一部のビジネス利用客の敬遠、新規供給による競争の激化に加え、大都市圏を中心に急増している民泊やクルーズ船、ホステルなどの簡易宿所を含む宿泊態様の多様化などが挙げられる。
観光庁の訪日外国人消費動向調査(2017年7~9月期)によると、宿泊施設として民泊が含まれる「その他」と回答する割合が2016年以降増加傾向にある〔図表3〕。また外国人延べ宿泊者数※1と、訪日外客数の前年同月比の推移を比較すると、2016年以降両者に乖離が生じ始めている〔図表5〕。ここで、外国人延べ宿泊者数の対象となる宿泊施設※2に民泊やクルーズ船は含まれない。訪日外客数の伸び率ほど外国人延べ宿泊者数が伸びていないということは、民泊やクルーズ船に需要が流出していることを示していると推察される。
2017年に入り客室単価を引き下げる動きも見受けられる大阪については、民泊の影響が特に強く現れたと考えられる。先述の観光庁の調査〔図表4〕によると、回答した訪日外国人の12.4%が民泊にあたる「有償での住宅宿泊」を利用したと回答した。これに対して大阪観光局による調査※3では、訪日外国人の19%が大阪で民泊を利用したと報告されており、全国ベースである観光庁の調査結果よりも大阪の割合が高い。
※1 延べ宿泊者数:各日の宿泊者数を月間で足し合わせた数。仮に二人組の旅行者が1ヶ月間(30日間)宿泊した場合は、2人×30日=60人となる。
※2 宿泊旅行統計調査の対象となる宿泊施設:ホテル、旅館、別荘・コンドミニアム、学校の寮・会社所有の宿泊施設、親族・知人宅、ユースホステル・ゲストハウス
※3 大阪観光局「平成28年度 関西国際空港 外国人動向調査結果」