シービーアールイー株式会社
札幌支店 支店長 ディレクター 西川 洋正
札幌進出の魅力
札幌市は他の地方都市と同様、全国展開型企業が拠点を置く支店経済都市ですが、その特徴として、コールセンターに代表されるアウトソース業務を行う情報通信業の集積が多いことが挙げられます。この背景には、本企画の「札幌市の進出企業支援」の章でもご紹介しましたが、札幌市の持つ次のような優位性があります。改めてここで整理してみましょう。
自然災害リスクが低い
札幌市は、関東や東海等と比較して地震リスクが低い地域とされています。台風の上陸も全国的に見て少なく、また内陸に位置しているので津波の心配もありません。大災害時に東京や大阪と同時に被災するリスクも低く、BCPの観点からも企業の拠点分散ニーズに応える立地です。
優秀な人材確保に有利
人件費が安いことに加え、他地域と比較して優秀な人材の採用が容易と言われています。北海道は女性を中心に地元志向の人が多いため、生産年齢人口が流出せずに道内で仕事を探す結果、大都市圏と比較して少ない仕事の口に、高学歴の人が多く集まることになります。コールセンター等の業務は従来以上に高度なスキルが必要となるため、人材採用面でメリットが見出せます。
進出コストが低水準
東京・大阪等に比較して低水準な賃料で、オフィスを賃借することが可能です。さらには、進出企業をバックアップする自治体の助成制度が充実しているため、初期投資を抑えることができます。
以上のようなアドバンテージが企業の進出意欲を高めており、昨年のトピックとしては、前章でもご紹介した通り、札幌三井JPビルディングにアクサ生命保険㈱が本社機能の一部を移転。重要機能の分散によるBCP強化が主な目的ということです。政府や自治体は、地方創生の下に東京に集中した本社機能の地方への分散を後押ししており、本件が呼び水となって、このような動きが加速することに期待しています。
受け皿不足で機会損失を懸念
一方で、今、札幌の賃貸オフィスマーケットに大きな問題が浮かび上がっています。札幌は、1972年の冬季オリンピックで開発が一気に進んだ街なので、メインストリート沿いに古いビルが多く、建替も進んでいないのが現状です。企業の拡張・新設需要は伸長しており、良質な空室はどんどん減っている状況で、今後も需給逼迫の傾向は継続するものと予想されます。人口減少、モバイルワークの進化、アウトソースの進展で、これからはオフィスが余るのではないかと言われていますが、アウトソースの受け皿となる企業が多い札幌では、むしろオフィスニーズが増加し続けています。札幌への進出ニーズが盛り上がりを見せる今こそ、既存ビルのリニューアルや建替への投資の機会だと考えます。ストックの更新により、札幌の街の魅力がさらに増していくことを願います。
本企画では、札幌市や企業の方々に取材協力をいただきましたこと、深く御礼申し上げます。「札幌市の進出企業支援」の章では札幌のビジネスエリアとしての優位性や市の企業サポートを、「進出企業 ご紹介」では拠点戦略における札幌のメリットを、そして「注目ビルのオーナー&AM会社 ご紹介」ではそれら企業の受け皿となるビルで街の活性化に寄与する取り組みを通じて、札幌の魅力を多角的にご紹介してきました。札幌の強みを広く知っていただき、移転先ご検討の際の一助となれば幸いです。