グレードAの大量供給期を迎え、今後の空室率は上昇傾向に。
根強いオフィス拡張ニーズ
シービーアールイー(株)調査による、2016年12月期の東京グレードAビルの空室率は2.8%と、対前期(同年9月期)比0.1ポイント上昇し、2期連続の上昇となった。グレードAの新築ビルが空室を抱えたまま竣工し、空室率を押し上げることとなったが、一方、比較的賃料が割安で、まとまった面積を確保できる天王洲エリアや品川シーサイドエリアで、既存物件の空室消化が進んだ。その結果、空室率は前期から0.1ポイントと小幅上昇にとどまった。
新規開設や拡張ニーズは衰えていないが、2016年9月期までに進んだ円高の影響等により、企業のコスト意識が高まり、賃料水準が高い新築グレードAのリーシングには時間を要するようになってきている。また、今後のグレードAの大量供給を踏まえ、一旦は館内増床もしくは周辺に分室を賃借し、市況の変化に応じて本社移転を検討する動きも見受けられる。
採用人員の増加により、執務スペースを増やしたいという要望は依然多いが、書類の削減やレイアウト見直しにより、スペースの効率化を図るという考え方も普及してきているようだ。併せて、働き方改革の一環として、ITインフラを整備し、フリーアドレスの導入や在宅勤務制度等を検討して、一人当たりの面積を縮小することで、より付加価値の高いハイグレードビルに移転し、社員の生産性を向上させようとする事例も散見される。
グレードA大量供給へ
今後の全グレードの新規供給は、2017~18年の2年間の平均で18万4千坪が予定されており、過去10年の平均とほぼ同水
準になる。しかしグレードAだけを見ると、この2年間の供給平均は12万3千坪と、過去10年の平均8万9千坪を大きく上回る。特に2018年、賃料水準が高いグレードAが空室を残したまま竣工し続けることがあれば、空室率上昇や賃料下落に歯止めがかからなくなる可能性も否めない。
空室率上昇傾向は今後も緩やかに続くとみられるが、昨年後半に竣工した「京橋エドグラン」「住友不動産六本木グランドタワー」等ではテナントが順調に決定してきている。米国の政策の行方次第では、賃貸不動産に対する需要が上振れする期待値もあり、需給バランス以外にもオフィス市況に影響を与える要素が多いことから、今後の動向を注視する必要がある。
ビル営業本部 中川 啓二朗
- 現在募集中の東京都の賃貸オフィス
- 現在募集中の千代田区の賃貸オフィス
- 現在募集中の中央区の賃貸オフィス
- 現在募集中の港区の賃貸オフィス
- 現在募集中の新宿区の賃貸オフィス
- 現在募集中の渋谷区の賃貸オフィス
- 現在募集中の品川区の賃貸オフィス
相場表
種別 | 賃料(共益費込) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
---|---|---|---|
主要3区大規模ビル | 25,000~46,000 円/坪 | 新築ビルで空室消化が進み、竣工に伴う空室率の大幅な上昇を抑制。 | |
主要3区中小規模ビル | 16,000~28,000 円/坪 |
駅近・築浅物件のニーズは多く、引き続き空室率は低水準。
|
|
周辺7区大規模ビル | 20,000~36,000 円/坪 |
館内増床のニーズが多く、エリアによっては外部募集にならずに空室が消化されている。
|
|
周辺7区中小規模ビル | 15,000~25,000 円/坪 |
駅近・築浅物件のニーズは多いが、立地条件の良くない物件や旧耐震物件等は苦戦している。
|
|
23区内大規模ビル | 14,000~21,000 円/坪 |
割安なエリアでコストを圧縮した統合移転等を計画する企業もあり、大型空室へのニーズは多い。
|
|
23区内中小規模ビル | 10,000~13,000 円/坪 |
引き続き分室出店等のニーズは多くあるが、立地条件・築年数によってリーシング状況は大きく異なる。
|
|
立川 | 10,000~19,000 円/坪 |
引き続き空室の少ない状態が続いているが、賃料相場は需要の停滞感から横ばいの傾向。
|
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
(注)主要3区=千代田、中央、港周辺7区=新宿、渋谷、文京、豊島、品川、台東、目黒23区内=左記10区を除く東京都内
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。