2014年12月、札幌市中心部のオフィス空室率は遂に5%を下回り、東京23区とほぼ同水準となった。ここでは、札幌オフィスマーケットの動向と、需要を大きく伸長させている企業動向について、CBREのデータに基づき解説する。
主な再開発事業 | |||
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名称〔仮称〕 | 竣工予定 | 延床面積 | 用途 他 |
A札幌信金本店ビル 建替 | 2016年春 | 13,737.43㎡ | 札幌信金本店ビル、店舗テナントビル |
B札幌駅前通共同ビル | 2017年 | 18,817.05㎡ | 事務所、店舗等 |
C札幌創世1.1.1区北1西1地区再開発 | 2018年度 | 131,085.10㎡ | 事務所、放送局、市民交流複合施設 他 |
D南2西3南西地区再開発 | − | 約4万4000㎡ | 事務所、店舗、共同住宅 他 |
E北8西1地区第一種市街地再開発 | 2018年度 | 約12万2000㎡ | 共同住宅、医療、店舗 他 |
札幌オフィスマーケット動向
札幌市全体のオフィス空室率は、2010年9月期に9.8%まで上昇したが、その後は緩やかに低下し、2014年3月期には6.2%とリーマンショック前の水準の6%台まで改善した。さらに、2014年12月期では4.5%の水準まで低下している〔グラフ1〕。
また2014年12月期の札幌市全体の想定成約賃料水準は、対前期(同年9月期)比4.0%と大幅に上昇し、10,340円/坪となった。空室率が順調に低下していることから、賃料はすでに底打ちしており、需要の高い札幌駅前通沿いのビルを中心に本格的な上昇に転じたものと思われる。
需給バランスを見ると、安定した供給が続いている状況にあり、2014年8月に「札幌三井JPビルディング」、2015年1月に「明治安田生命札幌大通ビル」が、いずれも概ね満室稼働で竣工した。企業の東京本社からの分散移転や、支店営業所のオフィス環境改善、オフィス集約目的の移転など、新規需要の喚起につながっている。2014年では新規供給面積は約7,700坪であったが、新規需要面積は約14,200坪となり、新規供給面積を大きく上回った〔グラフ2〕。新築ビルへ移転したテナント跡の二次空室も、大型区画を中心に急速に消化されてきており、一部ではテナント企業が思うように床を確保できなくなってきている状況も見受けられる。2016年は新規供給予定がないため、この傾向はより顕著になるとみられ、2017年以降も、新規需要面積は新規供給面積を上回る水準で推移するものと予測する。
企業の移転ニーズ動向
〔グラフ3〕は、札幌におけるテナント企業から弊社への移転に関する依頼(ニーズ)について、移転理由毎の件数の割合を、2009年から2014年までの推移で示したものである。
このグラフを見ると、2013年までは小幅な増減を繰り返していた拡張および新設といったプラス目的ニーズの割合が、2014年に大きく増加していることが分かる。
拡張や新設ニーズが増えた要因は、3つ考えられる。
1つは、アベノミクス効果による企業の業績好調の波が全国的に広がり、支店経済都市である札幌でも、全国展開型企業を中心として設備投資意欲が高まってきていることである。
2つ目に、これまで自社で行っていた業務を外部委託する企業が増加しており、その受託先となるコールセンターやIT関連企業をはじめとした情報通信業のオフィス拡張ニーズも増加したことが挙げられる。移転ニーズ面積の業種別割合推移を見ると、情報通信業が大きな割合を占めていることが分かる〔グラフ4〕。
そして3つ目は、次章より具体的なケースをご紹介するが、札幌の活性化を企図した市の取り組み、また企業の全国的な拠点戦略、そのニーズに応えるためのビルや街づくりへの取り組みが功を奏し、プラス目的移転を押し上げたことである。今後、札幌では、新規の拠点開設需要が増加していく市況になっていくものと予測する。