名駅、栄、伏見エリア オフィスマーケットでの位置付け
名古屋駅頭に開発される大型オフィスビル、「JPタワー名古屋」、「大名古屋ビルヂング」、「JRゲートタワー」。この3棟の開業は名古屋のオフィスマーケットにどのような影響を与えるのだろうか。
ほぼ同じ時期に、名古屋駅前の近接した立地に大型のオフィスビルが開発されることによって、「名駅」エリアにはさらに企業集積が進み、オフィスエリアとして活性化が進むことは間違いがない。他県や東京ともアクセスの良い名古屋駅隣接立地での開発は、テナント企業の大きな注目を集めている。
またこの3棟以降にも、「新・第二豊田ビル(仮称)」や笹島地区に開発される「グローバルゲート(仮称)」など、名古屋駅周辺に大型ビル開発が続くことも、「名駅」エリアをさらに活性化させることになるだろう。また、就業者や来街者の増加によって、商業施設などにも好影響があることは言うまでもない。
一方、「栄」や「伏見」など他のオフィスエリアとの関係はどうか。有数の繁華街と近接する「栄」エリアや、伝統的なオフィス街である「伏見」エリアには、「名駅」とは異なる個性があり、今も根強いオフィス需要を得ている。賃料水準の違いやエリアでの駐車場の確保の容易さなど、それぞれの強みがあり異なるテナントニーズを得ながら、特色あるオフィスエリアを形成していくものと考えられる。
意外と築浅ビルが少ない? 名古屋オフィスマーケット
「名駅」エリアでの大型開発により、名古屋オフィスマーケットでの供給増加が言われている。一見、名古屋ではビル供給ラッシュが起こっているように見る向きもあるが、果たしてそうだろうか。
「名古屋オフィスマーケットデータ」の項や「名駅」、「伏見」、「栄」の各ページに掲載した「大型ビル需給バランス推移」グラフに見られるように、近年、大型ビルの供給は限定的であったことが分かる。特に代表的なオフィスエリアである「栄」では、2009年以来、大型オフィスビルの新規供給は無く、2013年にも把握されていない。
実際、新耐震基準が適用された1987年以降に竣工した基準階貸室面積が300坪以上あるオフィスビルは、名古屋のオフィスビル全体の6%(棟数ベース)に過ぎないとのデータもある(もちろん、築年数が経過していても耐震対応しているビルが多くあることは言うまでもない)。築浅ビルが少ないのが名古屋オフィスマーケットの特徴なのである。これは「名駅」エリアでの大型開発によっても解消されない可能性が高い。
大型開発が話題になる一方で、名古屋に築浅ビルの空室在庫が少ないことはあまり知られておらず、今後企業が設備向上やBCPなどを念頭にオフィス移転を検討する際には、ビルの選択肢が限られてしまうことが予想される。大型ビルが稼働することでマーケットに動きが出るこの機会に、名古屋でのオフィス戦略を検討する必要があるのではないだろうか。
設備水準、立地、賃料などのバランスを検討し、早めの活動をお勧めする。
駐車場の確保がカギ 名古屋でのオフィス移転
道路網が整備され、いわゆる「クルマ社会」である名古屋。車を利用して営業活動をする企業は多い。愛知県内のみならず、三重県や岐阜県、静岡県など東海圏を統括する営業拠点が多く所在していること、また、日本を代表する自動車関連の製造業各社が名古屋市近郊にそれぞれ本社機能を構えていることから、効率的な営業を進めるためには営業車の活用が不可欠になる。
しかし、オフィスエリア内でのまとまった台数の駐車場の確保は簡単ではなく、おのずとその賃料水準は高くなる。ちなみにオフィスビル内駐車場では「名駅」エリアで1台当たりおよそ40,000~45,000円。「伏見」エリアではおよそ30,000~35,000円。商業施設が集まる「栄」エリアでは35,000~45,000円が目安となる。しかし、入居ビル内で希望台数の駐車スペースが確保できないケースもあり、その場合は近隣で駐車場を探すことになるが、容易ではないことも。
名古屋では、オフィス移転を考える際には、駐車場の確保も念頭に計画を進めなければならない。また、オフィスビル開発に際しては、駐車場をどの程度設置するのかを慎重に検討する必要がある。