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物流施設の空室率

物流業界におけるマルチテナント型物流施設市場

オフィス市場における認識とは意味合いが異なる物流施設の空室率

株式会社生駒データサービスシステム
コンサルタント 鈴木 公二

シービー・リチャードエリスでは、1999年7月より年2回『WAREHOUSE MARKET REPORT』を発刊し、物流施設の市場動向についてリサーチしている。また、2006年1月発行の同レポートvol.14からは、物流施設の新たな不動産関連指標としてマルチテナント型物流施設の空室率を提示している。今号のオフィスジャパン「物流マーケット情報」では、同レポートにおいて調査・分析を手がける担当者に、物流施設市場における市況データの見方と、現在のマーケットの動向を語ってもらった。オフィスや土地、住宅といった、一般的な不動産指標とは異なるデータの捉え方を、参考にしていただきたい。

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わが国特有の形態として発展したマルチテナント型物流施設

近年、物流業界においてマルチテナント型物流施設が注目を集めています。同施設の最大の特徴は、複数のテナントが一つの施設を共同で利用すること。ご承知のとおり、これまで倉庫や配送センターといった物流施設は、物流業者やメーカーなどが自社利用のために独自に建設するのが一般的であり、複数の企業が施設を共用するのは、極めて珍しい形態でありました。また、海外に目を転じても、このような施設はあまり例がありません。住宅地と分離した工業エリアに、研究所や工場などとともに、業務パークとして複数の企業が同居するケースはありますが、日本のように、都市部におけるマルチテナント型物流施設のようなスタイルは、かなり例外的なケースといえるのです。

倉庫や配送センターといった建物に限定せず日本の物流施設を見てみると、例えば、物流機能集積地に作られるトラックターミナルのように、ライバル企業同士が1施設を利用するといったケースがこれまでも存在しました。一つ屋根の下に同業他社が複数共存できるという、このような業界の土壌があったことが、マルチテナント型という、独自のスタイルに繋がっていったという側面があるかもしれません。

今日的なマルチテナント型物流施設のもう一つの特徴は、これらが民間企業の運営する施設であることです。複数のテナントが同居する物流施設の例は、これまで70年代に登場した「東京流通センター」や、その後の「かわさきファズ」、「YCC(横浜港流通センター)」などが開発されてきました。ただし、これらの施設は、単なる営利目的のみならず公共サービス的要素が強く、しかも物流ニーズが集中する、大都市圏の港湾部に限定したものだったといえます。その点で、昨今、開発されている100%民間企業による施設は、一線を画しているといえるでしょう

投資家の市場参入を計契機に短気集中的に開発が進む

【グラフ1】不動産開発会社等による新規供給の推移 首都圏

【グラフ1】 不動産開発会社等による新規供給の推移 首都圏

民間企業の施設という意味を違う側面から見ると、物流施設市場への投資家の参入と言い換えることができます。マルチテナント型物流施設は日本独自の形態とはいえ、市場拡大を牽引したのは外資系企業の手によるものでした。物流に特化した不動産投資・開発のグローバル企業であるプロロジスが、2003年9月に成田、同年11月に大田区東海へと進出。同年が、日本の物流施設市場の大きな転機になったのは、間違いないところです。当初は、複数テナントの入居という施設スタイルより、この不動産投資家の日本参入が、エポックメイキングな出来事として捉えられていました。以降、AMBプロパティコーポレーション、ラサールインベストメントマネージメントといった外資系投資家や、オリックス、野村不動産といった国内デベロッパーなど、不動産関連会社による新規供給案件が急増。面積ベースでは05年からの増加が目立っており、07年、08年はさらに大幅な上昇が予定されています【グラフ1】。つまり、マルチテナント型物流施設は不動産証券化による金融商品であり、グローバルな投資家からの資金流入が、近年の急速な開発ラッシュに繋がっているといえるのです。

2007年以降の不動産開発会社等による供給予定

2007年以降の不動産開発会社等による供給予定

市場動向の把握に注意が必要な物流施設の空室データ

【グラフ2】中・大型倉庫・配送センター賃料水準

【グラフ2】 中・大型倉庫・配送センター賃料水準

ここで、昨今の物流施設の市場動向を見てみましょう。【グラフ2】は、東京を中心とした首都圏における、募集面積1,000坪以上の中・大型物流施設の賃料推移。同データはマルチテナント型だけのものではありませんが、市場の傾向は読み取れると思います。

同グラフでは、埼玉・千葉・神奈川がほぼ横ばいで推移しているのに対し、東京だけはかなり下落傾向を示しています。この要因としては、湾岸エリアの国道357号線で交差点の立体化など道路整備が徐々に進み、交通インフラが拡充してきていることが挙げられます。例えば、東京の江東エリアと比較して、千葉の船橋や神奈川の川崎でも立地優位性に差がなくなってきており、そのため、都内の賃料の下落傾向が顕著に出てきているといえるでしょう。

【グラフ3】 首都圏のマルチテナント型物流施設空室率

【グラフ3】 首都圏のマルチテナント型物流施設空室率

また、首都圏のマルチテナント型物流施設の空室率【グラフ3】について見ると、まず、期毎でかなり大きな変動があることが見て取れます。これは、マルチテナント型はフロア貸しとなるケースが多いため、オフィスビル等と比べテナント数が少ないことが原因です。例えば2,000坪の床面積×5フロア、計1万坪の施設で、あと1社だけ募集しようとワンフロアが空いている状態でも、空室率は20%になってしまいます。加えて、竣工時に半分空いている施設などをカウントすれば、当然、空室率は上がってしまいます。その他、現在は27棟、半年前は22棟と徐々に増えているとはいえ、物件の総数が少ないため一つの施設に対する依存度が高いことも、空室率の変動幅を大きくする原因の一つといえます。これらが、空室率が安定せず、データをわかりにくくしている要因であり、オフィス市場における空室率との大きな違いであることを認識しておくべきでしょう。

では、こうしたデータが無意味であるかというと、そうではないと考えています。先にも述べたとおり、施設はこれまで増加傾向にありました。供給が急拡大する中で空室率が10%程度で止まっているということは、同施設群の供給がそれだけ需要を創出する効果があったと判断できます。

また、この空室率をデベロッパーや投資家の立場から見ると、データが全く示されていない不明確な市場の場合、リスクを高めに取らざるを得ないため、資金調達コストがかさんでしまいます。そして、その分は賃料に反映され、結果、高額な賃貸条件になることも考えられます。一方、情報が増えれば市場の透明性が高まり、リスク低減 (把握)、プレイヤーの増加を通じて、低コストでの資金調達が可能になり、ユーザーは、リーズナブルで使い勝手のよい施設が調達できるようになるわけです。

【グラフ4】不動産開発会社等による新規供給の推移
<関西圏>

【グラフ4】 不動産開発会社等による新規供給の推移<関西圏>

さらに、運営するオーナーの立場から見ると、一つの施設で空室が多くても、物件を複数所有していけば、現在ならおおむね10%程度で安定する可能性が高いと判断できます。

マルチテナント型物流施設の空室率データを見るうえで、ユーザーサイドから注意が必要な点があります。それは、オフィス等の市場に比べ、空室率の高さイコール需給バランスが緩和しているということではないということ。先に述べた、1テナント当たりの使用面積が多いことに加え、オフィスが2年の普通借家契約が多いのに対し、物流施設は5年以上の定期借家契約が多い。高い空室率であっても、あっという間に市場が逼迫する可能性があり、しかも長期契約のため空きが出にくいのです。ユーザーは、空室率の数字が高く市場に余裕があるようでも、いつでも入居できるわけではないことを認識しておくべきといえます。

大規模なニーズの顕在化が開発促進の大前提

【グラフ5】関西圏のマルチテナント型物流施設空室率

【グラフ5】 関西圏のマルチテナント型物流施設空室率

注目されているとはいえ、メーカーや物流会社の自社開発による建築を含めた物流施設の総着工数から見ると、マルチテナント型物流施設は全体の1割にも満たない水準です。目立って見えるのは、マルチテナント型が通常1万坪以上、大きな物件では3~4万坪の延床面積があり、そのスケールが大きいからです。そして、そのほとんどが東京を中心とした首都圏、および大阪周辺の関西圏に集中しています。それ以外では名古屋と福岡で08~09年にわずかに竣工が予定されている程度で、現在のところ地方にはほとんど広がっていません。

その最大の理由は、地方都市の物流ニーズが把握しにくいということ。現在のマルチテナント型物流施設の増加は建物としてのニーズによるものであって、物流量の純粋な増加ではありません。そもそも、今日の国内物流量は横ばいで、増加しているのは海外との貿易。その窓口となる国際空港や大規模な貿易港がある東京・横浜・大阪・神戸といったエリアに、大規模施設ができているのです。また、これらの地域は人口が集中する大都市であることも重要な要素。マルチテナント型物流施設は、一定規模以上の消費が見込める商圏に位置しなければペイしにくいというのが、現状といえます。

しかも、こうした地域は土地代が高く、広大な敷地が取りにくいこともあり、縦にフロアを何層にも重ね、各階をランプウェイで結ぶという、マルチテナント型特有の建物にする必然があるわけです。言い換えれば、それだけ大きな消費に裏付けられた貨物量や、3PL等のニーズが客観的に判断できなければなかなか開発には至らず、地方では顕在化していないのが実情なのです。また、土地に余裕があり、土地代が安い地域では、あえて縦に重ねなくても、大きな平屋を自前で調達でき、その点からも複層階型のマルチテナント型の施設である必要はないわけです。

2007年以降の不動産開発会社等による供給予定

2007年以降の不動産開発会社等による供給予定

マルチテナント型がもたらす社会や環境への貢献

改めてマルチテナント型物流施設が登場した意義を考えてみましょう。まず、これまで閉鎖的だった物流業界に対して、外資を中心とした投資家が参入したことで、市場の透明性が増したことが挙げられます。また、土地の有効活用という点からも、その資金力を利用して、物流一等地にハイグレードな施設ができたことは大きな意義があるでしょう。

本来、物流倉庫はあくまでも空間であり、オフィス立地のようにバリューやビルのグレードといった付加価値はたとえ最新の施設であってもさほど高いものではありませんでした。物件の選択はあくまでモノを中心とした実需ベースであり、コストや利便性が自社の戦略にあっているかどうかが最大の条件となることはいうまでもありません。

しかし、今日の物流業の最大の課題の一つである人材の確保においては、働く人に優しい施設は大きな意味を持ちます。特にエコロジーや耐震構造などは、環境に優しいばかりでなく安全性と事業の継続性といった付加価値をもたらすものであり、施設提供サイドは使い勝手だけでなく、こうしたメリットを含めた提案をしています。

また、こうした大型施設ができることで、周辺にコンビニエンスストアができて買い物が便利になる、公園のようなユーティリティ・スペースができる、夜は暗くて物騒だったところが明るくなるといった、近隣生活者に対してもイメージアップが図られる可能性があります。さらに、大型施設であれば、市街地と業務地とのエリア区分が明確となり、用途の混在を防ぐことができるなど、環境面、社会面でも大きな貢献が期待できるのです。

公共事業民営化を促す投資家の市場参入の架け橋に

先にも述べたとおり、マルチテナント型の施設は限られた土地を有効利用するために発案されたものです。とはいえ、倉庫としての賃料がとれないランプウェイ等の共用部が必要なこともあり、容積率が大きければ5,000坪程度の敷地、そうでなければ8,000坪程度ないと事業性を考えると非効率だといわれています。東京近郊や愛知の小牧周辺などニーズが確実な場所では、土地さえあれば開発したいとする投資家は多いですし、物流業界の拠点統合の動きが続く限り、さらなるニーズの顕在化は期待できるでしょう。

しかし、これまで開発されたものの多くは、工場跡地などの出物があったから可能だったともいえますし、今後、こうした土地が出てくる可能性はそれほど多くはないでしょう。投資家にとって、マルチテナント型物流施設に投資するかどうか、難しい選択を迫られるようになるのは間違いありません。

冒頭にも述べましたが、初期のマルチテナント型物流施設は、社会インフラの公共事業として開発された側面がありました。それが現在は、官のバックボーンがない中で、投資家の資金を背景に民間企業が営利事業として不動産開発を行い、当然ながら税金を払う立場にいるという状態になっています。つまり、公共的なインフラ整備が証券化され民間に移行すれば、これまでなかなか手が付けられなかった道路・橋、港湾施設などの建設への投資に繋がる可能性を、このマルチテナント型物流施設が示しているともいえます。この成功が、今後、さらなるインフラ投資への橋渡し役になることを、切に希望している次第です。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2007年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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