次世代型自動搬送ロボット「BUTLER(バトラー)」、その実力やいかに?
GROUND株式会社
www.groundinc.co.jp
CEO 代表取締役社長
宮田 啓友氏
先進物流施設の運営で多くの課題を抱えるマテハン
今日の物流施設において、マテハンを全くしていないところは1つもないだろう。マテハン(マテリアルハンドリング)とは、端的に言えば機械による作業のことであり、その作業効率を高めるために導入される設備や機械も、同様にマテハンと呼ばれている。小さなものでは商品を運ぶ時に載せるパレットから、フォークリフト、大きなものでは物流施設全体に設置されるコンベアーといった巨大なシステムまで含まれる。
大規模なマテハンは、もともとベルトコンベアーシステムによる大量生産で知られるフォードを皮切りに、製造業の工場の生産性向上を目的に導入されたものである。つまり、流れ作業がしやすいように製品本体を移動させたり、部品や部材を、必要とする組立工程に搬送するためのものだった。物流業におけるマテハンは、現在もこうした搬送機器やシステムを転用したものが多く、物流業界仕様に特化したものが登場したのはつい最近のことだ。それとて物流業界のニーズをすべてくみ取ったものではなく、思想として製造業方式のマテハンの域から脱していない面も多い。現在ニーズの主流となっている複雑で高度化したオペレーションを必要とする e-コマースに対応した物流や、設置する場所や物流施設のトレンドを考えると、まだまだ課題が多いのが現実である。
いくつか例を挙げてみよう。製造業では、自社の工場に生産に最適なマテハンを考える。初めにシステムありきでラインを作るが、特定の製品の生産が対象なのでそれでもいいわけだ。そのために設備を搬入することを前提に工場を建設できるし、移動させることを考慮する必要がないため、マテハンが施設躯体と一体化しているケースまである。
だが、マルチテナント型の物流施設では、こうした大型設備の導入のハードルは高い。また、施設全体にマテハンを設置してしまうと、在庫の増減や、あるいは取扱製品が減少した際の、スペースの不足や無駄が大きくなってしまう。仮にBTSで自社向けに建設した施設であっても、生産ではなく物流の視点から見れば、大規模マテハンの導入には同様のリスクが伴うし、何らかの理由で移転するといった状況に対応できなくなってしまうという欠点がある。
また製造業のように、限られた原材料や部品の搬送ならそれに合わせたコンベアーの幅やオリコン(折り畳み式コンテナ)のサイズに合わせた設備で問題はない。しかし物流、特に扱い商品が多岐にわたるe-コマースでは、商品のサイズや重量が多種多様かつ流動的。固定化したマテハンでは、保管はもちろんピッキング作業にも支障をきたすケースが多々考えられるだろう。
設備の不備を補うための人海戦術にも限界が
企業経営的な視点で見ても、大規模なマテハンの導入は難しくなっている。90年代までと2000年以降では、我が国においても投資に対する経営判断の仕方が変化しており、いわゆる欧米型の、短期間に結果を求める企業が増えている。先々の経済環境が不透明な現代においては、以前のように導入設備に対して10~20年で減価償却すればいいという考え方をする企業は少ない。経営リスクをヘッジするために、物流施設であれ3~5年で投資回収しようと目論む企業がほとんどだ。自前の倉庫を建設するのでなく、マルチテナント型を賃借で利用する物流事業者が多い理由の1つもここにある。同じ理由で、物流において大型設備は導入しづらく、不透明な将来に柔軟に対応できる汎用性が重要視されているのだ。
だが一方、B to C型の e-コマースでは、顧客の多様化した消費志向に迅速に対応するために、少量多品種の在庫が必要とされている。しかも、Life Time Valueのサイクルはますます短くなり、長期的な売れ筋の判断も困難になっている。こうした予見不能な状況に柔軟に対応しなければならないのだ。そのため、現実に行われているのは、大勢のワーカーを擁した作業スタイルだ。 e-コマースの物流センターというと、庫内スタッフがコンテナを押しながら商品ラックの間を歩き回りピッキング作業をしている姿を想像する方も多いだろう。つまり大型設備を導入できない、あるいは対応できない部分を、多くのワーカーによる人海戦術で補っているのが実状だ。しかし今日では、特に物流適地と言われるようなエリアの施設では、人員採用そのものが難しくなっているという現実もある。
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