シービーアールイー株式会社
関西支社 支社長 上遠野 孝
活況を呈するマーケット
景気回復による企業の業容拡大の影響は、東京には遅れながらも、大阪のオフィスマーケットにも確実に表れてきています。
グレードAビル※の空室率は、2013年春の大型供給で一旦跳ね上がった後、加速度的に低下し、2012年末の水準まで戻しています。全グレードの空室率も低下基調で推移しており、業種や企業規模を問わず、立地やビルグレードの改善、新設、拡張等、企業の積極的な動きが継続してみられるようになってきました。
2013年から今年にかけて、大阪オフィスマーケットにおける最大のトピックとしては、前述の大型供給、梅田のグランフロント大阪タワーの竣工とそれに伴う大手企業の移転が挙げられます。しかし、企業の動きが梅田に一極集中しているかというとそうではなく、西梅田や堂島エリアでは賃料調整が進んだビルに空室消化が見られ、また淀屋橋から本町エリアにかけても同様に大型の空室が消化されています。その結果、ある程度の規模で好条件の空室には引き合いが集中し、移転を検討する際の選択肢が狭まっており、企業は早期の意思決定を余儀なくされています。
一方で、賃料動向をみると、大型のビルでは物件によって上昇または相談幅が狭まってきているケースが見られるものの、企業のコスト意識は依然高く、全体として反転に至るにはもう少し時間がかかるものと予想されます。
※北区・中央区・淀川区を中心としたオフィス集積度が高い地域に所在する基準階350坪以上、貸室総面積6,500坪以上、延床面積10,000坪以上、築11年未満のオフィスビル
街が変わるために
大阪をはじめとする支店経済都市に所在するオフィスは、全国展開企業では東京の本社がオペレーションするケースが大部分です。現在、東日本大震災から3年余りを経て、東京の防災対策が一段落し、地方にも同じオフィススタンダードの導入に着手しようという段階となっています。今後は大阪でも、コスト削減一辺倒ではなく、耐震性能の高さ等を意識した移転ニーズが増えてくるでしょう。
しかし、それらのニーズを満たすような築浅ビルでは大型空室が希少化しており、しばらくは新規供給も抑制されます。そのため、この景況下で顕在化したオフィス需要が再び沈静化することも予測されます。
開発案件が増えるためには、投資意欲を高める、つまり賃料水準の上昇が必要ですが、大阪ではオフィスの大量供給とリーマン・ショック後の市況停滞期が重なって賃料水準が大幅に下落して以来、引き上げの材料に乏しく、本町エリアのような伝統あるオフィス街でも全国的にみて低い水準で推移しています。
今後、大阪で建て替えや再開発が進行して街の新陳代謝が進み、東京に次ぐ大都市に相応しい機能を備えていくために必要な条件の一つとして、賃料水準の底上げが挙げられることは間違いないでしょう。