サードパーティロジスティクス(3PL)の進展、サプライチェーンマネジメント(SCM)の浸透と、物流スタイルが進化するなか、その器となる物流施設へのニーズも大きく様変わりしている。特に注目されているのが、まるでオフィスビルのようにフロア毎に利用者が異なる、マルチテナント型の物流施設だ。これまで一般的であった自社専用倉庫とは、何から何まで違うこの施設。汎用性が高いとはいえ、はたして利用にあたり問題はないのだろうか。
今号の「物流マーケット情報」では、世界的な物流施設プロバイダー・プロロジスが提供する「プロロジスパーク大阪」を題材に、新たな倉庫・物流センターの形、マルチテナント型物流施設の利点と弱点を、施設説明と入居するテナントの声から探ってみたい。
プロロジスが語るマルチテナント型物流施設(平面タイプ)のメリット
これまで一般的とされてきた物流センターの形態は、1階レベルにトラックヤードが設置され、そこで荷捌きし、上層階にストックするというもの。対して、平面タイプのマルチテナント型物流施設は、ランプウエイを経て各階までトラックが着き、ストックする階での荷降ろし・積荷となる。
エレベータ等の垂直搬送設備が不要であることや、複数のフロアにまたがる設備・施設がいらないことから、純粋に倉庫として利用できる有効面積の割合は格段に高くなる(<倉庫有効面積の検証>参照)。この倉庫有効率に加え、人員の配置人数、フォークリフトの数、必要な設備の保守点検等を考慮すると、コストメリットが高く経費削減を図ることが可能だ。
また、作業効率といった点では、荷役にかかる時間が一般型の物流センターに比べ約半分との試算もある(<荷役の検証>参照)。その他、セキュリティやワーカー・マネジメントの行いやすさ、荷捌きが必ず屋内であることの利便性等、様々な点において、同タイプの物流施設のメリットを語ることができる。
プロロジスパーク大阪
所在地 | 大阪市住之江区南港南2丁目4番43号 | 規模 | 地上7階建 |
---|---|---|---|
敷地面積 | 45,982m2(13,909坪) | 着工 | 2003年8月 |
延床面積 | 158,297m2(47,885坪) | 竣工 | 2004年10月 |
賃貸面積 | 126,820m2(38,363坪) |
「プロロジスパーク大阪」は、南港ポートタウン線南港東駅徒歩1分に位置する、プロロジスとして関西地区初のマルチテナント型(複数テナント向け)大型物流施設であるとともに、西日本最大の物流施設である。同施設は、阪神港として神戸港と共にスーパー中枢港湾の指定を受けた大阪港の、「物流効率の高い国際物流拠点の形成」を目指す大阪市が「国際交易特区」として政府より認定を受けた地域に建設され、関西地域を中心とする日本国内、そして国際物流の拠点として最適の立地を誇る。現在、中国市場の拡大を受けて、物流量が増加している大阪港は、国際競争力を高めるため、様々な規制緩和や機能整備が予定されており、今後、同港を中心としたロジスティクス事業の発展および国際物流市場の拡大が予想されるが、こうした背景から同施設は、プロロジスの西日本におけるフラグシップ的存在として、国内外におけるビジネスの戦略的拠点としての大きな役割を担っていくこととなる。
施設規模は地上7階建。コンテナトレーラーが各階へ直接搬送可能なランプウェイを2基(上り用・下り用)備え、1階に大型貨物車50台以上、また各フロアに30台以上の停車が可能なトラックバースを備えるなど、大量かつ迅速な荷の積み下ろしが可能なスルー型物流センターとして高い機能特性を有している。また、通勤する上での交通アクセスの良さや、最新のオフィス設備を有する事務所を備えるなど、高い費用対効果、作業効率を実現するだけでなく、より快適な職場環境を提供することも目的として設計。なお、同施設の施工法には、大型物流施設としては国内で初めてとなる、免震工法およびプレキャスト・プレストレスト鉄筋コンクリート工法(PcaPC工法)を融合させた免震PcaPC構造を採用している。
マルチテナント型の物流施設で最も基になるのは、はたして取り扱う荷物も事業スタイルも異なる多数の企業が同居し、なにか不都合なことがおこらないのか。そして、そのような施設で、自社にとって最適なロジスティクス戦略を構築できるのか、という点ではないだろうか。いまだ「オフィスビルとは訳が違う」との声は根強い。ではここで、実際に関西発のマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク大阪」で事業を行う、日本通運、コクヨロジテム、ヤマトロジティクス、の3社の物流責任者の方々にご登場いただき、移転の経緯から選択に至った決め手、同施設での事業戦略、入居後の使い勝手についてうかがってみた。