経営層とスタッフ双方のコミットメントを 引き出すことの重要性
ワークプレイスを構築していく過程では、経営層とエンドユーザーたるスタッフの両者によるコミットメントが欠かせません。経営層がワークプレイスの経営的な位置付けを明確にすることによって、ワークプレイス戦略が実現すべき目標が明らかになります。
一方、スタッフがワークプレイスづくりに参加することによって、ボトムアップの詳細なアイデアを盛り込むことができるだけでなく、ワークプレイスの所有意識を高めることができます。この意識は、スタッフによる自律的なワークプレイス運営を助け、移転・構築後、コストをかけずにできるアップグレードのサイクルをも実現可能にします。
ワークプレイス戦略
従来のインテリアデザインを中心としたオフィス構築手法と、今後一般化していく包括的なオフィス構築手法の違いは、ワークプレイスを戦略的に捉える役割の有無にあります。プロジェクトマネジメントと同様に、インハウス、アウトソースに関わらず、ワークプレイス戦略という役割を設置する企業が見られるようになってきています。
CBREのワークプレイス戦略業務には、移転を前提としたプロセスの場合、以下の項目があります〔図表3〕。
① 移転プロジェクト始動(IT部門、人事部門を取り込んだプロジェクトチーム)
② ワークプレイス調査1●現状のワークプレイスポートフォリオ情報を整理する
③ ワークプレイス調査2●スペースの使われ方を評価する(デスク、会議室、その他のスペースの利用率)
④ ワークプレイス調査3●現行のスペースや働き方、組織文化に関する社員の現状評価と将来への展望、経営層と社員の意識の乖離を明確化する(アンケート調査、インタビュー、ワークショップなどによる)
⑤ 調査結果を反映したワークプレイス戦略を策定する
⑥ オフィス戦略に則った物件選定を考える
⑦ 経営ビジョンに直結するワークプレイスのコンセプトをつくり、経営トップの承認を得る
⑧ 社員を巻き込んで、最適な空間と働き方の「枠組み」をデザインする(戦略的デザイン指示書)
⑨ 新しいオフィスの枠組みに対して経営陣からの承認を得る
⑩ インテリアデザイナーやITコンサルタントによる提案が、定められた枠組みに則っているかをレビューする
⑪ 新しい仕事環境と働き方実現へのプロセスを支援する(変革のマネジメント)
⑫ 新しい環境と働き方を導入した後の効果測定を行う(POE-Post Occupancy Evaluation)/li>
※各数字と内容は〔図表3〕とリンクしています。
“戦略的デザイン指示書”(含プログラミング)とは? 〔ワークプレイス戦略業務⑧〕
CBREでは、基本設計がスタートする前の段階で、客観的かつ科学的な設計要件の整理と、各ステークホルダーとの合意形成を強力に推進しています。このプロセスを経ることにより、より経営的利益に結び付くワークプレイス戦略を選択することが可能となると同時に、「根拠のある」デザインを提案し、経営陣からの承認を得やすくなります。
また、設計者はこのデザイン指示書の設定する指針に従って設計を行いますので、設計プロセスにおける手戻りを大幅に減らすことができ、プロジェクト全体の期間とコストの最適化が可能となります〔図表4〕。
大前提となる“経営陣の賛同”が得られやすい 提案のために〔CBREのツール〕
スペースの使用率調査(客観的)とオンライン・アンケート調査(主観的)と組み合わせて分析した結果を基に、「戦略的デザイン」の提案を行います。
例えば、(アンケートでは)高いパフォーマンスが確認でき、とても有益ではあるが、(観察調査からは)使用率の低いスペースは、使用率を改善させる何かしらのアクションが必要かもしれません(例:トレーニングやコミュニケーション)。
まずは現状の評価から、すべての戦略をスタートさせるべきです。
ツール スペースの使用率調査(定量的な現状把握)
■目 的
現在のスペースが、1日のうちどの程度、どのように使用されているかを数値化
■調 査
(特別に開発されたツールを使用)
•各観察ポイントで、何人が、どれくらいの時間、どんな活動をしているのか
•どの程度紙が使用されているか
■期 間
観察調査のアナウンス後、5~10日間
ツール オンライン・アンケート調査(定量的な現状把握)
■対 象
すべてのスタッフを対象にWeb上でアンケートを実施(調査結果を部門ごとに分けて分析)
■設 問
(特別に開あらゆる角度からワークプレイス環境のパフォーマンスと重要度について質問
●コラボレーション●意思決定のスピード●意思決定者へのコンタクトのしやすさ●生産性の妨げ(例:ロスタイム)●新しいアイデアの形成と組織横断型インタラクションの関係●同僚とのコミュニケーションのしやすさ
■期 間
調査のアナウンス後、1〜2週間で回答(リマインダー・メールも送信)
ツール 部門の枠を超えたワークショップ(定性的な現状把握)
■目 的
現状把握の調査結果の理解を深めるために実施、組織文化など特徴的なトピックや問題点を深掘する
■対 象
様々なビジネスグループで2時間程度のワークショップを実施、トピックにより、10~15人規模のグループ、50人程の大規模グループで実施
■期 間
使用率・アンケート調査と同時並行で実施可能だが、調査後の実施が望ましい
“パイロットスペース”で 実験することの有効性
規模の大きなワークプレイス移転・変革プロジェクトにおいて、 CBREでは、戦略的な手法として、承認された戦略の枠組みをまずは小さな規模で実験してから全体に適用することを推奨しています。
例えば、2,000人規模の移転の場合、約100〜200人用のスペースを既存のフロアに作って、約半年程度スタッフの方に実際にそこで仕事をしていただきます。
パイロットスペースは、既存のフロアをできるだけ活かしながら、新しく導入を検討している機能・テクノロジー・スペースのタイプを盛り込んで、いわゆるハイブリッドな状態で実験的に使用するものです。大規模移転を前提としていますので、テクノロジーやオフィス家具などはサンプルを無料で設置することも交渉次第では可能となります。できるだけコストをかけずに構築することが重要です。
CBREワークプレイス戦略チームは、パイロットスペースのユーザーを対象にワークプレイス調査を行い、フィードバックを集めるためのワークショップやコミュニケーションプログラムを実施します。そこから得られた知見を反映させて、設計者と共に、移転先の最終的なデザインの枠組みを決定するサポートをします。
本稿についてのお問い合わせ
シービーアールイー株式会社 ワークプレイスストラテジー部 奥 錬太郎 Email : Rentaro.Oku@cbre.co.jp