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ワーク/ライフ・バランスとオフィス環境改革

“1日の大半はオフィスで過ごし、有給休暇は毎年繰り越し”が当たり前の日本人のワークスタイルを、今、積極的に改革しようとする企業が現れてきている。各社の取り組みとは、どのようなものだろうか。

文 ワークプレイス・リサーチ・センタ 代表 小田 毘古
http://www.odahiko.com/

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はじめに

「ワーク/ライフ・バランス」という言葉をご存知だろうか?

 これまでの日本人の働き方は、江戸時代は「殿のため」、明治の富国強兵時代には「お国のため」、太平洋戦争では「天皇陛下のため」、そして戦後は「会社のため」と、ずっと「誰かのため」だった。

 国として成熟し、産業構造も製造中心から知識型へ移行しつつある現在、次世代の日本の役割は、“モノツクリ”なら開発型、ソフト中心、サービス産 業にシフトする必要があると言われている。知識型産業に必要なのは、創意工夫、開発技術、突拍子もないアイデア、ブレイクスルーである。

 日本の技術力は、ひとつの基礎技術を応用する才能にたけていると言われる。これをうまく利用・発展させたのが会社という組織だった。これからの知 識型産業社会においては、個人の創造力をさらにかきたてる環境が必要となる。個人の自由闊達な発想を引き出す環境とは何か。このひとつのコンセプトが、 「ワーク/ライフ・バランス」である。

国をあげて取り組んだフィンランド

フィンランド 自然との生活

北欧のフィンランドは、国際競争力では日本をはるかにしのぎ、トップクラスにつけている(IMD調査)。この国は、以前は森林産業が経済活動の大半 を占めたが、今ではノキアに代表されるように、エレクトロニクス産業が主力となりコンピュータや携帯電話の普及率は世界一となっている。ウインドウズを脅 かす存在にまでなったコンピュータのOS「リナックス」も、フィンランドの技術である。名目国民所得は日本より低いものの、生活は豊かだ。

休暇をたっぷり取り、冬は避寒に南欧等に出かけ、最低1ヵ月は休む。週末は森のセカンドハウスで過ごし、残業はすこぶる少ない。では、なぜこのような生活ができるのか?

ひとつのヒントが、ワーク(働くこと)とライフ(個人の生活)がバランス(調和)して動いていることだと思う。

研究室に閉じこもって朝から晩まで働きづめでは、よいアイデアは出にくいだろう。創造力を高めるには、適度な休息をとり、長期休暇もとって、よそへ出かけて見聞を広めることも必要だ。つまり、頭の切り替えも重要なのだ。

フィンランドが産業構造の変革に成功したのは、教育制度の情報技術重視の構造改革によるところが大きい(この分野に関しては、現在、日本も引けを とらない)。同時に彼らは、働き方を変革し、情報技術を駆使してワークスタイルを変えた。どこでも仕事ができ、オフィスにしばられない。これなら休暇先で も仕事が可能だ。

もうひとつ重要なのは、仕事と家庭生活の両立を支援する家族政策にある。

仕事と家庭の両立は、フィンランドの家族・男女平等政策が伝統的に重要視してきた分野だ。その背景には、フィンランドの女性が古くから労働市場に 参加してきたことがあり、ほとんどの女性がフルタイムで就業している。また、社会保障制度として、全ての住民が無料あるいは低料金で、公立教育機関、保健 施設、デイケアを利用できる社会的インフラを整備してきた。今では、在宅勤務も盛んになっている。

日本でも、この4月から次世代育成支援対策推進法が施行され、「仕事と家庭の両立に関する行動計画」を、各事業主に求めている。これは、少子化対策の面からも、ワーク/ライフ・バランスが重要であることを、国が理解した法律でもある。

ワーク/ライフ・バランスは、「働く人の視点」に立って、働き方を見る考え方でもある。「会社のため」から「自分のため」に、どのように働き、自 分のスキル・知識を高めて、自立した人間に変化するかがキーとなる。逆にいえば、会社人間を脱却し、自立した考えと幅広い視野、技術・知識を身につけた人 こそ、企業にとって役に立つことを実践する、という考え方でもある。

北城経済同友会代表幹事もこう述べている。

「従業員が仕事ばかりしている会社よりも、仕事以外にも時間を使える会社の方が意欲を持って働けるはずだ。会社や上司が休暇の取得を奨励するなど、休みを取りたい人が取れる環境をつくることが重要だろう」(日本経済新聞)

では、具体的に、企業としてはどのような取り組みをしたらよいか。先進3社の例を紹介したい。

日本テレコムーライフスタイリスト

ビルの中の街《日本テレコム》

日本テレコムは、汐留の高層ビルに集約移転した。そのオフィスは、これまでの日本のオフィスの常識を打ち破る画期的なものになった。ビルのフロアに 街ができ、緑の大木の周辺に憩うオフィス、石畳の広場に集うオフィスなど、席を特定せず、自分のその日の仕事に合わせて選べる仕組みになっている。

また、ITツールの活用による新しいライフスタイル・ワークスタイルを検証する、「ライフスタイリスト」というワーク/ライフ・バランスの実験も 行っている。これは、「社員が生き生きとしていなければ、会社は輝けない。豊かな私生活は豊かな発想を生み、個人の能力を高め、良い仕事につながる」とい う倉重社長の理念から始まったプログラム。倉重氏は、IBMビジネスコンサルティング サービス社(旧プライスウォーターハウスコンサルティング)時代にも、同様の「働き方とオフィスの改革」により、数年間で売上を10倍にした、「働き方と オフィス改革の効果」を日本で最も理解している経営者の一人だ。日本テレコムは、JRを母体にして創業した純日本企業。その後、外資の傘下に入ったが、発 足当時からの日本型の働き方に染まっている人も多い。そのしがらみを打破すべく「働き方とオフィスの改革」に取り組んだ。実験の成果は上々のようだ。

ライフスタイリスト実験成果《日本テレコム》

小学生の子供を持つ女性は、在宅でも仕事ができるテレワークについて、「働く母親のための制度が整ってきて、同じ会社に籍を置いたまま、“自分で働 き方を選ぶ”時代になった」と喜ぶ。また営業担当の50代の男性(執行役員)は、「早急な判断が必要な際、出張の時でも、新幹線の待ち時間を有効活用し、 駅で会社のLANに接続し決裁を行った。部下とのコミュニケーションにITツールを使うことによって、より迅速に指示が出せた。以前はPC操作に自信がな かったが、とまどいながらも使うことにより、知識を向上させ、充実した生活を送っている」と評価している。

オフィスには、社員個人の仕事を行う場としての位置付けは残しているものの、コラボレーションによる創造性の発揮を期待している仕掛けが多い。

あるライフスタイリストは、復職してオフィスに戻ってくる人に対して、「机はないし、オフィスの中に飛び石や芝生(に見立てたカーペット)はある し、さらには傘つきの木のテーブルや石畳、あまりに立派な社員食堂…以前のオフィスとは見た目もまったく違います。さらにペーパレス化、どこでもオフィス 等々、かなりのカルチャーショックを受けるでしょう」と心配するほどだ。

同オフィスは、2005年度の『日経ニューオフィス推進賞』を受賞している。

アルソア本社ー高原のオフィス

高原のオフィス《アルソア》

八ヶ岳の麓、山梨県小淵沢の高原にアルソアの本社がある。化粧品や健康食品の製造会社だが、1998年、それまで東京・渋谷にあった会社を、滝口社 長自ら社員200名を引き連れて、小淵沢に移ってきた。「まずは全員小淵沢へ行こう、問題は移ってから解決していこう」と強制疎開ばりの移転だったとい う。このときのスローガンが、“あなたにとって豊かな生活とは何ですか”。実現目標に掲げたのは「自然との調和」、「健康で充実した体」、「創造的な職場 環境」、「幸福な家庭生活」。

本社機能、研究開発、営業本部など、第一線の営業と工場を除いて、会社のすべてが高原のリゾートオフィスに集結した。イタリアの建築デザイナーに よるアルソア本社の建物は、豊かな自然にマッチして、窓から見る森や花は額縁の絵のようだ。自然食中心のカフェテリアは、外のテラスも使えて心地よい。ま さに「自然との調和」を実現しており、働くには素晴らしい環境だ。同オフィスは、1999年度の『日経ニューオフィス環境奨励賞』を受賞した。

この地に順応した社員の評判は高い。「夜遅くまで働く」生活が、「遅くとも8時に切上げるようになった」。「ここでしかできないことにチャレン ジ。乗馬、星空を見る、山に登る」。「ストレスを忘れさせる環境がある」と、“ライフ”の充実では成果をあげている。会社の評価も、「酒を飲む機会が減 り、その代わりクラブ活動が盛んになって、コミュニケーションが深まり、社員のモチベーションが高まった」という。しかし一方で、都会型の人間にとって住 み心地は良くなかったようで、離職率は渋谷時代より高くなったそうだ。“あなたにとって豊かな生活とは何ですか”の問いかけには、ライフスタイルは人によ り様々であるという回答が出たようである。

昨年、6年間の経験を踏まえて、同社は下記の新たな目標を追加して、ワーク/ライフ・バランスの追求に取り組んでいる。

  • 「金銭的豊かさ」だけでなく「心の豊かさ」
  • 「個人としての自立」をサポート
  • 「知価社会に役立つ発想を生み出す環境」

鍋屋バイテック ーいい製品はいい環境から

工場公園《鍋屋バイテック》

金物の町・岐阜県関市に、鍋屋バイテックという創業440年の歴史を持つ会社がある。桶狭間の戦いで、織田信長が初めて鉄砲を使ってその有用性に気 がつき、爾来、鉄砲部品の製造を始めたのが、この会社のルーツ。今では、特殊ねじ、プーリーなどの機械部品のメーカーになっているが、中部経済圏の中で も、その高い技術力とユニークな経営手法が特筆される存在だ。

“いい製品はいい環境から”生まれるとの信念のもと、製品開発では“世の中にないもの”を、“失敗を許容し、常識でないことを考える職人の集団” を目指し、多品種少量生産に特化している。午後2時までの注文は、その日のうちに、ねじ一本でも出荷するという顧客本位の経営スタイルも評価されている。

岡本社長の考える「いい環境」は、「自分の仕事に生きがいをもって楽しく働ける環境」と定義されている。技術が命の企業だから、「開発技術者は仕 事ばかりに没頭せず、頭の切り替えをせよ」とエアロビクス、フィットネス、サウナ、ジャグジー、プールが用意され、マージャンルームまである。休日は家族 一緒に、これらの施設を自由に使うこともできる。プール開きには家族だけでなく近隣の人も呼んで、大パーティを工場の敷地内で開いている。社員の誕生日や 結婚記念日には、社長自ら、花を持って、お祝いの言葉をかける。家族の名前を覚えられるのは社員200人が限度と、それ以上の規模にしないようにしている という。

日差しの明るいオフィス《鍋屋バイテック》

“工場公園”というだけあって、緑の森と芝生に包まれた、塀もなく、守衛もいない開放的な敷地に、工場やオフィスが建ち並んでいる。「ゆとりある 環境は、いい製品を生む…。その思想は、快適で機能的なオフィスを表彰する、1993年度の『日経ニューオフィス推進賞(通商産業大臣賞)』を受賞したこ とで認められました。 人の感性は“ものづくり”にとって重要です。私たちは“ものづくり”を環境から考えています」と、同社のホームページに紹介されているように、オフィス環 境も素晴らしい。このような環境の中で働く人の満足度は高いはずで、現実、離職率はゼロという。

トップ主導による経営・オフィス改革

ワーク/ライフ・バランスというと、次世代育成支援対策推進法にうたわれているように、女性中心の“仕事と家庭の両立”を目指しているものと捉えが ちだ。確かに、アメリカでも昔はそれが中心だった。しかし、現在では、男性にもその権利があり、“仕事と自己の両立”に変化してきている。

これまで紹介してきた3社の事例に共通していることは、規模の大小、やり方の相違はあるものの、働く人の視点に立って経営を考えていることだ。 「良い発想は、豊かな個人生活と良い環境から生まれる」という点も共通している。働く人のモチベーションを高め、生産性につなげるには、個人の生き方、そ の家族に配慮する。この考え方を突き詰めていくと、働く人の物理的環境にも、自然に目がいくようになる。オフィスが素晴らしいのも当然だ。

倉重氏はともかく、滝口氏や岡本氏は「ワーク/ライフ・バランス」という言葉をご存知なかったかもしれない。しかし、実践されていることは、まさ に「ワーク/ライフ・バランス」である。そして、経営者にとっても、社員にとってもハッピイな成果をあげている。まさに、理想的な経営といえる。

産業構造が変化し続ける今日、フィンランドのように国の施策として、法律、教育制度の改革も必要だが、企業経営としても、ワーク/ライフ・バラン スは、社員の生産性向上に寄与し、結果として会社を豊かにする考え方であることを理解すべきだ。「私生活は個人が考えること」、という考えは古い。最後 に、ワーク/ライフ・バランスを推進するにあたってのポイントを記すので、企業も積極的に社員個人とその家族をサポートする仕組みを考えていただきたい。

  • 経営トップの頭を切り替えるには、先進企業の成功例を見ることがいちばん。
    ボトムアップは無理。
  • 「働き方を変える」には、制度を整備すると同時に、オフィスも経営改革のツールと理解し、徹底的に変えてみる。
    中途半端なオフィスは作らない。
  • 有給休暇など、ワーク/ライフ・バランスに直結する制度は、確実に行使できる環境を整備する。
    権利だけの有給休暇制度は意味が無い。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2005年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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