空室率は2 期連続低下。企業は物件の選定に慎重な姿勢。
想定成約賃料は変動なし
シービーアールイー(株)の調査によると、福岡における2021年12月期の空室率は、対前期(同年9月期)比0.1ポイント低下し、 2.9%となった。大型のオフィス床を使用する企業の面積圧縮の動きこそあるものの、それを吸収する形で、新規の事業所開設や拡張移転といった動きも散見され、他のエリアと比較した福岡のマーケ ットの底堅さを表していると言えそうだ。
一方で、想定成約賃料は前期からの変動はなく、16,200円/坪(共益費込)となった。新たに供給されるオフィスビルが、全体平均を押し上げるなか、前期比での変動がなかった背景には、既存ビルの賃料値下げという下方修正要因が綱引きをし合い、結果的に均衡を保っているものと考えられる。
供給サイドの新築ビル竣工に伴う賃料上昇の構図はあるが、他方で、テナントサイドの物件選別、特に20,000円/坪(共益費込)を超える、高価格帯の既存ビルの選定には慎重さが見られ、物件によっては、空室期間の長期化も顕著となっている。
労働環境を、徐々に在宅勤務からオフィスへ回帰させる動きが広がるなか、テナントサイドでは、 IT環境を充実させ、在宅でのリモ ートワークと従来のオフィス勤務との併用という、汎用性を持たせた働き方も、増えているように見受けられる。
新規供給ラッシュへの期待と懸念
緊急事態宣言下であった2021年9月、福岡市が主導する再開発事業「天神ビッグバン」の規制緩和第1号案件「天神ビジネスセンター」が竣工を迎えた。今後を占う、第1号案件としての稼働状況は、好調である。その後を追うように、2025年にかけて、次々と大型の新築供給が控えている。再開発に伴う新規供給で、福岡のオフィスマーケットは、総面積が20%ほど拡張する予定である。好立地、ハイグレードなオフィスビルに対する期待や注目度は高まるが、その反面、既存ビルに発生する二次空室が順調に消化されるかどうか、その動向次第では、堅調さを維持してきた福岡のオフィスマーケットにも、陰りが見えるかもしれない。
福岡のオフィス市況を牽引してきたコールセンター需要や、自社ビルに入居する、従来賃貸オフィスマーケットにいなかったプレイヤーの賃貸ビルへの移転事例などが、今後の鍵を握るかもしれない。
福岡支店 布施 直
- 現在募集中の福岡県の賃貸オフィス
続きを見るにはログインが必要です