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株式会社ラッシュジャパン|事業拠点構築ケーススタディ

ケーススタディ

2019年9月30日

株式会社ラッシュジャパン

英国発コスメブランドのラッシュは、2019年6月、アジア最大規模の旗艦店「LUSH 新宿店」をオープンした。グローバル共通のブランドの信念に則りながら、ローカルで最適化した世界で一つの店舗づくりがラッシュ流。多種多様な人々が行き交う世界の「新宿」から発信するのは、どのようなブランドメッセージなのか。また、それを体現する店舗をどのようにつくっていくのか。日本でありながら日本に縛られない「ボーダーレスな売場」を目指すラッシュの挑戦に迫る。

”コスモポリタン”な新宿から世界へ
英国発コスメブランドが発信する買い物の新体験。
アジア最大規模の旗艦店誕生。

株式会社ラッシュジャパン

大型店開発を推進するグローバル戦略 「店舗への投資はリテール企業の責任」

英国生まれの自然派コスメブランド・LUSH(ラッシュ)といえば、駅ビルやショッピングセンターなど人通りの多い場所で見かける小型店のイメージがある。ナチュラルな雰囲気の木製棚に、色鮮やかでバラエティ豊かな商品が一面に並べられている。そんな店内を想起する人は多いだろう。ラッシュが展開する商品は、スキンケアやヘアケア、ボディケア、バス用品など多岐にわたり、定番商品だけで600SKU以上。「8歳から80歳まで、あらゆる人のあらゆるニーズを満たすような商品を提供するのが私たちのブランド。今も商品数は増え続けています」と、ラッシュジャパン取締役ブランド・リテール担当役員の小林弥生氏は話す。

そのラッシュが近年、都心部で大型店の出店を進めている。今年6月には、アジア最大規模の旗艦店「LUSH 新宿店」をJR新宿駅中央東口前にオープンした。売場は1階から4階、約380坪の広さを誇る。小林氏によると、大型店開発は4年前からグローバルで始まったという。その先鞭を着けたのは、2015年にロンドンでオープンした「オックスフォードストリート店」(地上1階、地下2階)だった。時期を同じくして、原宿表参道店(現原宿店)がオープン。その後も、大阪心斎橋や神戸三宮などの重要拠点で60~100坪の大型店の出店が続いた。ちなみに、ラッシュが世界48の国と地域で展開する約930店舗のうち、84店舗を構える日本は、北米、イギリスに次ぐ第3のマーケットである。

グローバルで大型店開発に舵を切ったのは、「商品をただ並べるだけでなく、毎日のお客様の肌の状態に合わせてスタッフが最適な商品をご提案できる環境を整えるため」と小林氏は説明する。また、新鮮な原材料とハンドメイドへのこだわりや、開発過程における動物実験の廃止、プラスチック容器や包装の削減など、人・動物・環境に配慮した独自の取り組みを顧客に伝え、体験してもらう空間としても大型店を位置づけているという。このグローバル戦略のもと、今年3月にはイギリス・リバプールに売場1,500㎡(450坪)の世界最大店舗がオープンしたほか、ドイツ・ミュンヘンでも大型店舗の開業を控えている。

世界を見渡せば、老舗百貨店の倒産や閉鎖が相次ぎ、小売業界には逆風が吹き荒れている。ラッシュの本拠地であるイギリスも、EU離脱の影響で決して活況とはいえない。そのような状況で、リスクを承知であえて大型店舗に投資する理由を尋ねると、小林氏は「それは、お客様にショッピングを提供するリテール企業の責任」だと力強く語る。「商品を売るだけであれば、20~30坪の小型店の方が経営効率はいいかもしれません。しかし、それではリテールマーケットは活性化しません。お買物を楽しめる店があってこそ、お客様はショッピングに出掛けようと思ってくださいます。我々が勇気をもって投資することで、変えていけることがあるはずです」。

圧倒的な知名度と集客力が決め手 日本✖英国がタッグを組む一大プロジェクト

株式会社ラッシュジャパン

ここからは、6月にオープンした「LUSH 新宿店」について詳しく見ていこう。アジア最大級の出店に向けて、国内候補地を探し始めたのは2015年のこと。翌年3月にはCBREに物件探索を専任で依頼し、大型店開発を本格化させた。「世界でも知名度の高いエリア」という条件のもと、銀座、渋谷、表参道、新宿などの候補地が挙がる中、「ショッピングという観点で考えると、圧倒的な集客力を持つ新宿に白羽の矢が立った」と話すのは、同社経営チームプロパティ統括シニアマネージャーの渡辺修氏。伊勢丹新宿店がある新宿通りに狙いを定め、網羅的にビルを調査したところ、某コスメブランド退店後のビルが1棟貸しで募集されている情報をつかんだという。この物件は、「場所は申し分なかったものの、建物が細長く、入り口も狭かったので、アジア旗艦店には相応しくない」(渡辺氏)と判断。その後も探し続け、2018年4月、3ヶ月後に閉鎖予定だったコムサストアの店舗跡地を確保したのである。

それから間もなく、日本とイギリスの合同プロジェクトチームが結成された。設計デザインのメンバーを中心に、人事部門やマーケティング部門、店舗への商品供給に関わる製造部門など全部門横断で構成され、主要メンバーだけで30~40名、関係者を含めると100名程度の大所帯となった。

まず、店のコンセプトを決めるにあたっては、「グローバル共通のブランドの信念に沿いながら、各拠点のエリア特性や建物のスタイルを考慮して決める」(小林氏)という。新宿店と同時期に開店準備が進められたリバプール店では、周辺エリアと重厚で歴史ある建物に合わせて、落ち着いた雰囲気の百貨店スタイルが採用された。一方、新宿はどうかといえば、「世界中から多種多様な人たちが集まる新宿は“、コスモポリタン”という言葉がぴったり。ターゲットを絞るより、誰にでも開かれた店という意味で、“All are welcome.”をテーマに店舗開発を進めていきました」と小林氏は話す。

ビジュアルとデジタルを駆使して言語の壁を越えた「ボーダーレスな売場」

株式会社ラッシュジャパン

あらゆる国の人が利用できる「ボーダーレスな空間」をつくるうえで、障害となるのが言語表示である。日本語での商品説明は外国客には理解できないし、かといって何ヶ国の言語表示が必要かと考えるとキリがない。そこで同社が目指したのが、「文字情報にできるだけ頼らない売場」である。誰にでも理解しやすいアイコンやピクトグラム、デジタルスクリーン等に表示される動画コンテンツなどの視覚情報を効果的に活用するほか、商品に触れると音が奏でられるタッチセンサーの仕掛けも用意。デジタルツールを駆使することで、言葉の壁を越えたコミュニケーションや、より楽しい買い物体験を可能にする売場に挑戦したのである。

店内で価格表示以外の文字情報を極力減らす一方、そこで生じる情報不足を補うのが「デジタルパッケージ」である。ラッシュは、プラスチックごみの削減にも積極的に取り組んでいて、包装パッケージを使用しない固形商品も多数開発している。ラッシュ独自のアプリでそれらの商品をスキャンすると、商品の香りや原材料、使い方動画などの詳細情報をスマホ画面で確認できるという仕組みだ。デジタルパッケージは2018年に原宿店から始まり、現在は4ヶ国語に対応。コスメ企業によるプラスチックフリーの取り組みとして様々なメディアで紹介されるなど、注目を集めている。「お客様の反応も上々」(小林氏)だという。

新宿店限定商品も合わせると1,200種類を超える豊富な品ぞろえも、ボーダーレスな売場には欠かせない。加えて、ラッシュ初の取り組みとして、オーガニックフラワーの売場を1階に新設した。それにしても、なぜコスメブランドが花の販売を始めたのだろうか。「ラッシュには花を原材料にした商品もあり、私たちにとって花は身近な存在です。その流通過程で、花を長持ちさせるために化学肥料が使われていることを知りました。原材料の新鮮さにこだわるラッシュの考え方をもってすれば、“今が旬”の花の自然な美しさをお客様に提供できると考えたからです」(小林氏)。未経験の分野だけに、スタッフが大手フラワーショップで2ヶ月間の研修を受け、準備を進めてきたという。このように、ブランドの新たな挑戦を通じて実現される新しいライフスタイルを顧客に体験してもらうことも、新宿店の重要な役割なのである。

新宿店はフロア構成にも工夫がある。実は、階段で上り下りする2階層の店舗はこれまでにもあったが、新宿店のようにエスカレータが設置された4階層の店舗はグローバルでも初めてだという。渡辺氏によると、2階層の場合、1階の売上が全体の8割を占めるほど上層階に客を誘導するのは困難だということで、「フロア間の回遊を促すにはどうするのがいいのか、手探り状態でした」と打ち明ける。そこで、フロアごとに異なるコンセプトを設け、上層階に向かうにつれカラフルでポップなデザインにすることで、移動を促す仕掛けにした。「今のところ各階まんべんなくお客様が入っているようで、ホッとしています」と渡辺氏。今後の状況次第では、フロアの配置換えも検討していくという。

ローカル主導と外国人視点のバランスがプロジェクト成功の秘訣

株式会社ラッシュジャパン

店舗づくりにおいて最も苦労した点として、小林氏はスケジュール管理を挙げた。アジア最大規模の店舗であることや、デジタルツールを駆使した新たなショッピング体験の提供など、日本初もしくはグローバル初の試みが重なったことで、難易度が高くなったという。結果的にオープンに間に合わせることができたのは、建築業者や取引先など関係者との良好なパートナー関係があったからだと小林氏は話す。「建築業者の方々には無理難題もお願いしましたが、ラッシュが実現したいことを皆さんが理解して、一緒に模索してくださったから、完成できたのだと思います」。

外資系企業が拠点の構築を手がける際、本社との調整に手間取るケースが多いが、同社の場合はグローバルでの協力が功を奏したようだ。「新宿店はアジアの旗艦店とはいえ、運営するのは我々ですから、基本的にはローカル主導で進めていきました。一方、チームの半分を占めるイギリスのスタッフも、日本を何度も訪れ、新宿の土地柄をよく理解したうえでデザインしてくれました。逆に、グローバルなメンバーだったおかげで、日本人だけでは見落としがちな“外国人の視点”を気づかせてくれることも多々あり、それらをうまく取り入れることができたという点で、彼らとの協業は不可欠だったと思います」(小林氏)。

小売業界の苦戦が伝えられるなか、あえて大型店開発の道を進むラッシュ。6月に新宿店がオープンすると、「アジア最大規模」や「デジタルと融合した近未来型ショッピング体験」といった話題性から多くのメディアに取り上げられた。「ひとまずオープンしましたが、これで完成だとは思っていません。お客様のニーズの変化に合わせて、私たちの店も日々変化を遂げていきます。お客様が足を運びたくなる店舗を展開することに、我々はもっと意識して取り組んでいきたいと考えています」と小林氏は抱負を語った。

株式会社ラッシュジャパン
株式会社ラッシュジャパン
株式会社ラッシュジャパン

プロジェクト概要

企業名 株式会社ラッシュジャパン
施設 LUSH 新宿店
所在地 東京都新宿区新宿3-26-6
規模 地上1階~4階 売場面積380坪
販売フロア
1階:メイクアップ、フラワー、フレッシュ
2階:スキンケア、ヘアケア、フレッシュ、マウス、メイクアップ、パフューム、パーティー
3階:シャワー、バス、ソープ、ギフト、パーティー、スワッグ
4階:スパ(2019年8月31日オープン)
CBRE業務 アジア最大旗艦店出店に伴うオーナーへのアプローチ業務・仲介

この記事に関するCBREのニュースリリースを下記よりご覧いただけます。

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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