貸店舗・賃貸店舗の記事

ハーマンミラーストア青山|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2021年8月6日

ハーマンミラーストア青山

1905年にアメリカで創業し、モダンファニチャーの概念をつくりだした老舗家具メーカー「ハーマンミラー」。昨年2020年12月11日に、自宅や小規模オフィスでの使用を想定したホームオフィス製品を中心に展示・販売を行う、国内2店舗目の直営店「ハーマンミラーストア青山」をオープンさせた。コロナ禍、在宅勤務などのワークスタイルが日常的になるなか、グローバル戦略の一環である直営ストア出店の背景や目的はどのようなものなのか。代表取締役の松崎勉氏に話を聞いた。

国内2店舗目の直営ストアが青山に誕生。変化を続ける今のマーケットに、ブランドの価値を正しく伝えていく。

ハーマンミラーストア青山

グローバル戦略に基づき 新たな直営ストアをオープン

コロナ禍における生活様式の変化により、瞬く間に日常的なワークスタイルとして広がりを見せた「在宅勤務」。勝手知ったる自宅ではあるものの、不慣れなリモートワークと働く場所としてのオフィスとの環境や機能の違いに、戸惑いを覚えた人も多いことだろう。しかし、急場しのぎに思えたその状況にも我々は次第に順応しつつあり、かねてから叫ばれてきた「柔軟な働き方」とも歩幅を合わせつつある。ワーカーや企業はもちろん、世に出るサービスやプロダクトにも、オフィスではない場所で生産的かつ快適に働くことを意識したものが見られるようになってきた。今回取材したハーマンミラーをはじめとする家具インテリア業界もその一つだ。

ハーマンミラージャパン株式会社の代表取締役である松崎勉氏は、次のように語る。「コロナ禍に入ってからの巣ごもり需要もあり、業界としてはおしなべて売り上げが伸びています。ただし、弊社は家具とデザインを通じて社会の課題を解決することを社是としてきた企業であり、新型コロナウイルスの感染拡大以前より、世界的に小規模オフィスや自宅で仕事をする上で使う製品のニーズが高まってきていると感じていました。昨年12月にオープンした「ハーマンミラーストア青山」も、すでにコロナ以前からホームオフィス製品に特化した小規模店舗にすることは決まっていましたし、コロナ禍との一致はまったくの想定外でした。とはいえ、このタイミングで生まれたニューノーマルという概念や社会の変化は、我々にとって追い風になっていることも確かです」。

家具とデザインを通じて 社会の課題を解決していく

ハーマンミラーストア青山

「社会の課題を家具とデザインで解決する」。家庭や小規模オフィス向けのホームオフィス製品を専門に扱い、2020年12月にオープンしたハーマンミラーストア青山は、コロナ禍を受けて早急に立ち上げられた店舗のようにも思われるが、実際には松崎氏の言葉にもある通り、そうではない。ハーマンミラーは1905年にアメリカ・ミシガン州で創業し、モダンファニチャーの概念と歴史を切り拓いてきた老舗の家具メーカーである。今から11年前の2010年には、それまで世界中で広く展開してきた代理店販売に加え、顧客とのダイレクトなコミュニケーションとマーケティングを目的とした直営店「ハーマンミラーストア」を、創業以来初めてオープン。リテールを自ら手がけるようになり、その際には本国アメリカではなく、ビジネスの街である東京・丸の内を舞台に選択したというこだわりを持つ。また、翌2011年には、アメリカでオンラインストアが開店。その後日本や中国でもオンラインストアが開設された。2016年には2店目の直営店舗をニューヨークに構え、ハーマンミラーストア丸の内が10年周年を迎える節目の年であった昨年2020年には、ほぼ同時期にロサンゼルス、ニューヨーク、そして東京・青山に、ホームオフィス製品をメインに扱う小規模店舗をオープンさせた。つまり、青山の店舗は、老舗家具メーカーが時代やマーケットの変化に伴い、緻密に計画してきたグローバル戦略のもと、次なる一手として仕掛けた直営のストアなのだ。コロナ禍に対するアクションとして捉えるのは早計であり、そこにはプロダクトを通じて社会や暮らしをより良くしてきたことを自負する、ハーマンミラーの哲学が強く息づいている。

「ハーマンミラーの歴史のなかで大きなターニングポイントになったのは、モダンファニチャーという概念をつくり出したことだと言われています。今から100年近く前、ヨーロッパの影響が色濃く残る重厚でクラシカルなテイスト一辺倒だった家具の世界に、アメリカ出身の優れた外部デザイナー達を採用し、斬新なデザインによるイノベーションを起こしました。そのDNAは脈々と受け継がれ、1950年代にはミッドセンチュリーとカテゴライズされる、シンプルかつスタイリッシュな家具やアイテムを生み出し、60年代から70年代にかけてはデザイン性を保ちつつ、主にオフィスファニチャーを手がけるようになりました。当時ワーカーたちが使っていたタイプライタがやがてコンピュータとなり、デスクワークが長時間化することを予見し、いち早く人間工学に基づく製品を発表したのがその頃です。デザインというものは見た目の美しさであったり、ともすればプロダクトに付随する遊びの部分だと思われることもあります。しかしハーマンミラーでは、モダンファニチャーが誕生して100年以上が経った今でも、デザインで課題を解決することを意識し、プロダクトの実用性にこだわっています」。

ユーザーに寄りそうかたちで 最適なロケーションを選定

ハーマンミラーストア青山

「現代はSNSなどを通じて情報が一斉に共有される時代です。お客様同士も国を超えたコミュニケーションが簡単に行えるなど、ブランドに抱くイメージや期待値もグローバル化し、共通しているようにも思います。そのような潮流の中では、我々ハーマンミラーもいちブランドとして、どの国においても一貫して高品質なカスタマーエクスペリエンスを提供していくことが大切だと考えるようになりました。そのためにはプロダクトに関する知識や機能、意義や背景など、あらゆるストーリーを正しいかたちで伝えなければなりません。それこそが直営ストアの役割です」と、松崎氏は現在のマーケットと直営店の意義を語る。11年前、直営ストアを展開する嚆矢となった「ハーマンミラーストア丸の内」では、ユーザー参加型のイベントをオープン当初から毎月実施。デスクやチェアは、日用品のように頻繁に購入されるアイテムではないが、丸の内で働くオフィスワーカーたちが仕事終わりに足を運び、コロナ禍となる以前は、年間2万5千名から3万名の来店があったという。中でも直近の5年間は、近隣の再開発で街に賑わいが生まれ、道行く人がストアに立ち寄るという波及効果も。「我々が初の直営店である丸の内ストアから得られたものは大きく、デメリットを感じたことはありません。イベントのコストも回収できていますし、10年間で数十万名の来店があったことから、お客様からいただく意見も蓄積されています。また、ストアでチェアに座っていただき、オンラインでご購入いただく。その逆にオンラインで調べ、ストアで体験し、ご購入いただく。オンラインとオフラインのどちらでも構いませんが、いずれにしても家具のリテールは体験していただくことが大切です。このような考えを得られたのも、丸の内のストアのおかげですね。その結果、我々としては直営ストアとオンラインストア、二つのチャネルをより戦略的に展開していくことにしました」。

先述の通り、代理店販売を行い、100年以上店舗を持たなかったハーマンミラーは、丸の内に世界初となる直営ストアを設けた2010年以降、各国にオンラインストアを開設し、本国アメリカでは直営ストアの数を増やしてきた。特にアメリカでは、すでに多数の店舗を有する小売ブランドを買収し、その運営も手がけるなど、顧客との直接のコミュニケーションに力を入れ、オンラインストアとの両輪で事業を拡大している。ただし、実店舗に関しては、ストアを構えるロケーションの選び方が采配の行方を握ると、松崎氏は言う。「ニューヨークやロンドン、東京といった大都市では、1店舗のみでマーケット全体をカバーするのは難しいです。我々もニューヨークではマンハッタン区で5店舗、市内に広げるともう2店舗、近郊も含めればさらに2店舗ほど、店を設けています。つまり、同じ都市であってもお客様には自身の生活圏があり、買い物の際もそこから外へ出ない傾向が見られます。そのため、今回の青山のストアも、ホームオフィス製品を取り扱う以上は丸の内のようなビジネス街ではなく、小規模企業が集まり、なおかつお客様の生活圏とも重なるエリアに絞って、候補地を探していきました」。

グローバル戦略のもと、新店舗のコンセプトが定まった2019年の秋頃から、東京でも候補地探しをスタート。エリアとしては下地としてハーマンミラーの認知度が期待できる、デザインやファッション分野の企業が集まる青山をはじめ、渋谷や代官山などを検討エリアとしてピックアップ。翌2020年に入ってからは、具体的な物件も探し始めた。「物件探しは、コロナ禍で外出制限もあり本当に大変でした。私も在宅勤務で、業務を終えると毎晩Google Mapのストリートビューを使っては街を徘徊し、街の雰囲気、通りの雰囲気を調べていましたね(笑)。新店舗は1フロアで小規模にすることが決まっていましたし、もちろん家賃との兼ね合いも重要なポイント。外出ができるようになってからは候補の物件に足を運び、ビルのオーナー様と実際に交渉を重ねた物件も多々あります」。

新しいストアをオープンする時期は、遅くともクリスマス商戦には間に合わせたかったと松崎氏。「5月ぐらいに候補が絞られ、結果的には10月半ばに現在の青山の物件に入居することを決めました。クリスマス商戦も近づいていましたが、店舗の内装や使用するグラフィックは、アメリカの新店舗と共通のものが先行してつくられていたので、物件が決まってからは短期間でストアをオープンすることができました」。

体験を通じてブランドの価値を伝えていく

ハーマンミラーストア青山

2020年12月11日、奇しくも2010年の丸の内ストアと同日に無事にオープンを迎えた「ハーマンミラーストア青山」。新しい直営ストアの最大の目的は、ロサンゼルスやニューヨークの新店舗と同様に、来店客にハーマンミラーのホームオフィス製品を体験してもらうことにある。「実用性を重視した我々の製品は、見た目で選ぶ家具とは違います。たとえばチェアに長時間座ったときの身体への負担をいかに軽減するのか、体験を通して家具とデザインによる課題解決を確かめ、実感していただくことを大事にしています。そのためなら、お客様にストアで何時間お過ごしいただいても構いません」。

直営ストアには、ハーマンミラーのプロダクトについてはもちろん、人間工学を学んだスタッフが在籍し、事前に予約をすればユーザーの職種や肩こり・腰痛といった症状などをもとに、的確な家具の選び方をアドバイスするサービスを実施。また、プロダクトについて詳しく調べられるデジタルツールも設置されているため、接客を必要としないユーザーも、自分のペースで気兼ねなく製品を体験することが可能だ。

ハーマンミラーストア青山には、在宅勤務などを想定したホームオフィス製品のほか、昨今注目されるeスポーツ向けのゲーミングチェアやデスクなど、人が身体を酷使するシーンを想定した最新のプロダクトが幅広く揃う。モダンファニチャーという概念で革命を起こしたハーマンミラーの、今、最も新しいモダンを、ぜひこのストアで体験してほしい。

プロジェクト概要

企業名 ハーマンミラージャパン株式会社
施設 ハーマンミラーストア青山
所在地 東京都港区南青山5丁目13-1
オープン 2020年12月11日
規模 約140㎡
CBRE業務 施設賃貸借仲介業務

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は下記のフォームからお問い合わせください。

フォームへ進む

上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

貸店舗・賃貸店舗の記事を検索

よく読まれている記事

関連記事

ニッサン パビリオン|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2021年2月10日

横浜みなとみらい21地区にオープンし、8月1日から10月23日まで期間限定で公開された体験型エンターテインメント施設「ニッサン...

株式会社富士薬品|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2020年11月6日

富山で創業し、1954年からは埼玉を本拠地に事業を展開してきた、複合型医薬品企業「富士薬品」。 300万軒の家庭とネットワーク...

オールバーズ 原宿店|店舗出店ケーススタディ

ケーススタディ

2020年10月6日

海外通販などで日本でも知る人ぞ知るサンフランシスコ発のシューズブランド「Allbirds (オールバーズ)」が、今年1月、原宿...