03年から右肩上がりの広島の平均改定率だが、08年も僅かながら上昇。
依然マイナス水準とはいえ、平均改定率が一貫して上昇しているのは、全国でも広島だけの動向である。
オーナー景況感指数も-40と、悲観論が主流とはいえその水準は全国で最も高い。
05年、06年、07年と、空室率が10%以上にもかかわらず景況感指数がプラスであることや、その05年、オーナーマインドが最も明るい年に減額改定が半数以上となっていること、さらに、近年の空室率上昇期においても平均改定率が上昇していることなど、もともと広島は、オーナーマインドや空室率と賃料改定動向との関係が希薄な一面がある。
ただし、09年の新規供給が7,000坪以上と比較的まとまった面積となることから、広島においても誘致競争が激化し、テナント引き止め策として継続賃料調整が進む可能性は高い。
高松
07年時点で景況感指数が-32と、早々と先行きへの不安感を示していた高松のオーナーマインド。
しかし、08年末までは空室率も低下傾向にあったことから、同年の賃料改定動向はさほどテナント有利の状況は示されていない。
最新09年6月の空室率も16.6%と最も市場が緩んだ03年の水準には至っていないものの、現地の声を聞くと、直近の賃料改定事情は大きくテナント有利なものにシフトしているようである。
テナントの改定希望は20%前後の減額で、交渉の末10~20%で落ち着くといったケースが頻出。
また、従来の減額改定では、更新後一定期間内での解約に対し違約条項を設ける場合が多かったが、それさえ設けられていない契約更新も散見される。
賃料改定の8割近く減額改定という05年の状況に、勝るとも劣らないオーナー苦難の事態といっても、決して過言ではない。
福岡
08年、09年、2年連続で2万坪強の新規供給と、新築ラッシュを迎えている福岡。
景気減退の影がまだ薄かった当初は、これら供給により需要が喚起されていたものの、現在は一転、需給ギャップは広がる一方となっている。
08年の賃料改定動向で増額改定が9.0%ほど見られるが、これは、同年前半、以前低廉な賃料で入居したテナントに対し、まだ旺盛だった移転ニーズと高騰する新規賃料水準を背景に上方修正を行ったもの。
景気低迷が深刻さを増した後半以降は、とても増額改定を行える状況ではなかった。
逆に全体の5.4%と減額改定の割合は比較的低水準だが、今後、需要創出がないなか新規供給が続くことで、新築ビルにおける募集賃料の低下と、それに対抗すべく既存ビルで継続賃料減額の施策が取られるのは必至。
景況感指数の急激な低下が示す懸念が、現実のものとなるだろう。
凡例
分析対象
1990~2008年の過去19年間において、1990~1995年については当該年5月~次年4月、1996~2008年については1~12月にそれぞれ賃料改定を実施したもの(契約更新を迎えたもの)。また、原則として改定時期が2年毎のもの。
総額・減額海底割合グラフ 1990年~2008年の過去19年間
毎年、各エリア毎、全サンプルに占める増額改定、減額改定、据置の割合を層グラフ化、それぞれ赤色、青色、灰色の色付けで年毎の推移を提示。最新データの2008年のみ、各数値(%)をグラフ右端に併記した。
平均改定率・空室率とビルオーナー景況感指数グラフ 2000年~2008年の過去9年間
『ビルオーナー景況感指数』
「今後のオフィス市況が、現在と比較してどのように変化していくと考えられるか」につき質問し、回答があったものにつき集計。この回答のうち「良くなっていく」...①、「悪くなっていく」...②、「どちらとも言えない」...③という3つの選択肢から、①と②の割合の差分を求め指数とした。同指数の経年推移。
指数化の例:東京2008年のビルオーナー景況感指数
「良くなっていく」13%...①
「悪くなっていく」57%...②
「どちらとも言えない」30%...③
ビルオーナー景況感=①-②=-44
※ビルオーナー景況感の指数算出にあたっては、日本銀行が発表する企業短期経済観測調査(短観)の業況判断指数(DI)の算出方法を参考とした。
『平均改定率(%)』 改定率の平均についての経年推移。
『空室率(%)』 各年12月期の空室率。