空室率は3期連続上昇。企業のマイナスの動きが目立つ。
成約賃料もさらに下落
シービーアールイー(株)の調査による、2020年12月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は、前期(同年9月期)から0.5ポイント上昇の1.7%となり、3期連続の空室率上昇となった。新型コロナウイルスの感染拡大予防対策として、出社率を抑えたテレワークの導入や、完全在宅勤務等の働き方に変化した企業、来客型となる教室・貸会議室等の業態の拠点撤退、一部減床等、解約の動きが目立った。また、「天神ビッグバン」の建て替えに伴う、立ち退き需要が一巡したことや、先行き不透明な景況感から、テナント企業の方針見直し、意思決定スピードの鈍化が、募集中の空室の長期化につながった。
空室率の上昇に伴い、想定成約賃料は0.7 % 下落し、前期比-110円の16,350円/坪(共益費込)と、2期連続の下落となった。既存ビルの解約に伴う空室(解約予兆も含む)は、少しずつ増加傾向にあるが、募集賃料は、昨年の緊急事態宣言以前と、ほぼ変わらない水準である。ただし、募集期間が長期化しつつある物件から、競合となり得る周辺のビルより、賃貸条件を緩和する動きが見受けられるようになった。マーケット動向の停滞を見兼ねて、テナントが少しでも借りやすい条件を提示し、早期決定を目指す方向に切り替えたためである。
懸念される今後の二次空室
「天神ビッグバン」第1号案件である今年の新築物件「天神ビジネスセンター」のテナント成約状況は、堅調である。募集している貸室は、福岡のトッププライスとなる30,000円/坪で成約に至っていることから、福岡のオフィス市場を牽引する形となっている。今後竣工を控える新築物件オーナーの関心度は高く、その動向は、新たなオフィスビル開発を検討中の投資家からも、注目されている。
コロナ禍でも、システム開発、IT関連、コールセンターといった業種の増床・分室案件は増え、成約も出てきている。しかし、今年の新規供給量は約2.1万坪分あり、懸念されるのは、その二次空室である。ここ数年、枯渇していた空室が、一気に増加することが予測されている。テナント動向が不透明なことを考慮すると、競争力の高い物件を含め、比較検討できる物件が増えることから、価格競争は免れないだろう。
福岡支店 江頭 秀人
- 現在募集中の福岡県の賃貸オフィス
相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 17,000円~21,000円/坪 | 大型空室への需要は鈍化しているものの、中小規模の空室は流動的。募集賃料は横ばいではあるが、下落の予兆あり。 | |
博多駅東 | 15,000円~17,000円/坪 | 動き少なく、空室率は横ばい。募集賃料についても横ばい状態が続いているが、下落の予兆あり。 | |
呉服町 | 15,000円~17,000円/坪 | 大きな動きは見られず、目立った新規空室は少ない。募集賃料に ついては現状維持で推移。 | |
天神 | 19,000円~22,000円/坪 | 空室消化の動きはあるものの、需要の鈍化傾向で空室率変わらず。 募集賃料については現状維持で推移しているが、下落の予兆あり。 | |
赤坂大名 | 14,000円~16,000円/坪 | 解約、成約ともに大きな動きは見られず。募集賃料については依然として横ばい状態が続いているが、他エリアとともに下落の予兆あり。 | |
北九州小倉 | 9,000円~11,000円/坪 | テナント動向は停滞状態が続いている。募集賃料についても横ばい。 | |
中・大型倉庫 市内 |
3,000円~3,500円/坪 | 大型倉庫は変わらず満床。2021年竣工分もテナントが内定している物件が多い。コロナ禍においてもニーズは堅調で来年以降もLMTの計画が複数あり。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。