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製造の主導権を握る新興国 | どうなる?世界の製造業

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2018年4月20日

製造の主導権を握る新興国

2014年、新興国の製造業生産高が、初めて先進国を上回った〔グラフ2〕。この大きな経済的シフトは、グローバルな物流ネットワーク及びグローバル経済全体に影響を与えている。多くの新興国市場が、過去20年にわたり自国の製造分野を発展させてきたが、国際的優位性の上昇を先導してきたのは間違いなくアジア太平洋地域である。最初にこのトレンドを先導したのは日本で、それに台湾、香港、シンガポールが続いた。しかし、2006年以降、アジア太平洋地域の製造業の優位性は、中国の台頭によって牽引されている。

中国が最初に投資への扉を開けたのは1970年代後半であるが、経済政策が自由化され世界貿易機関(WTO)への加盟が承認された2001年以降、世界市場へのアクセスが大幅に向上した。それ以来、世界の製造業における中国のシェアは7%から28%へと上昇し、多くの分野の製造業で中心的役割を担っている。過去15年間における世界の製造業の年間生産高上昇額4兆8000億円のうち、中国1国だけでその55%を占めており、70%のアジア太平洋地域全体や10%未満のアメリカと比較してもその上昇額が大きいことがわかる。

グラフ2 製造業生産高のグローバルシフト

中国の台頭は、他の東南アジア各国に地域内サプライチェーンが構築されるなどの波及効果をもたらした。韓国は総輸出額の26%が中国への輸出で、台湾は26%、タイは21%、日本は17%、シンガポールは13%、ベトナムは11%を中国に輸出している。これらの国から輸出される品目の範囲は幅広いが、中心は電子機器、機械、医療機器、技術装置である。対照的に、インドネシアは依然として石油、石炭、木材、鉄鋼などの基礎製品を中国に輸出している。

新興国市場の製造業は、アジアだけで発展しているわけではない。1994年に施行された北米自由貿易協定(NAFTA)は、メキシコにとって極めて重要なものであり、これにより、アメリカ市場に製品を供給する現代的な製造業で経済を発展させてきた。また、アメリカ-メキシコ間の貿易は一方通行ではなく、アメリカからメキシコへの輸出も盛況となった。ヨーロッパ内においても、ソ連とそれを取り巻く共産主義各国の崩壊後、低価格高技術の中東欧諸国(CEE)で製造業が急速に発展した。中東欧諸国のEU単一市場への加盟は、この地域における重要な出来事であり、これにより貿易の拡大や国境を越えたサプライチェーンの統合が可能になったと言える。

一方で、先進国の製造業は、ますますハイテク化し、生産性が高くなっている。製造業における新興国の台頭は、先進国の衰退を意味するものではない。先進国の製造業は、医薬、航空宇宙関連機器、精密機械などの高付加価値工業製品を下支えする技術的ノウハウとスキルを有しており、発展し続けている。こうした分野は、研究開発への大規模な投資や、新興国の競合が難しい産業集積や知的生産性の高さが必要となるからだ。ただし、先進国の製造業における卓越性は、新たな大量雇用には結びついていない。全世界に5億5000万人いる製造業の雇用者のうち、先進国での雇用はわずか10%。また、従業員1人当たりのGDPが、例えば精密機械分野の49,000ドル、繊維・衣料分野の4,500ドルとの比較から明らかなように、先進国における製造業の雇用は高付加価値で資本集約性の高い役割を持つため、ますます高賃金となっている。

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上記内容は BZ空間誌 2018年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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