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株式会社富士薬品|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ

2020年11月6日

株式会社富士薬品

富山で創業し、1954年からは埼玉を本拠地に事業を展開してきた、複合型医薬品企業「富士薬品」。 300万軒の家庭とネットワークを持つ配置薬販売をはじめ、1,350店舗を展開するドラッグストア、そして、新薬の開発から販売までを手がける同社が、今春、新たな“会社の顔”として東京本部を開設した。本社や従来の営業本部は埼玉に残しつつ、なぜ今、東京進出なのか。ワンフロア約300名の社員たちが従事する東京本部オフィスやその目的について、話を聞いた。

社長の“先見の明”にもとづく東京進出。
富士薬品のブランド価値をさらに高め、世界に向けた発信力の向上を目指す。

株式会社富士薬品

次なる時代に向けた“会社の顔”となる拠点づくり

300年以上も前の江戸時代に富山で始まったといわれる「配置薬の販売」。行商人たちは全国各地の家庭を訪ねては、以前に置いていった薬から使われた分だけの代金をもらい、「富山の薬屋さん」と親しまれていたという。今回ケーススタディにご登場いただく富士薬品は、そんな富山にルーツを持ち、配置薬の販売はもとより、ドラッグストアや新薬開発なども手がける複合型医薬品企業だ。

創業は1930年。富山県富山市(現在)で配置薬販売事業を始め、四半世紀が経った1954年には得意先の多かった埼玉県の大宮へ本拠を移転し、法人に。1986年にはルーツの富山市に医薬品製造工場を立ち上げ、薬の製造から販売までを一貫して手がけるようになった。そして、1992年には業界でいち早くドラッグストア事業に着手。「ドラッグセイムス」を中心に、今では全国約1,350店舗を展開している。また、それらに加え、2013年には高尿酸血症治療薬「トピロリック錠」、2020年には選択的尿酸再吸収阻害薬「ユリス錠」という、2種類の医療用医薬品の製造販売をスタート。今も全国に300万軒の顧客を持つ配置薬に始まり、主力事業に成長したドラッグストア、そして医療用医薬品の自社開発と、これら三つの事業が、複合型医薬品企業と呼ばれる所以となっている。

昨今ドラッグストアは我々の暮らしに欠かせない存在となり、街のいたるところで店舗を見かけるようになった。当然のように業界内の競争激化やM&Aなども進む中、2020年の今春、富士薬品が次なる一手として仕掛けたアクションが、東京への進出だ。しかも本社や従来の大宮本部は、従来と変わらずさいたま市の大宮に残し、千代田区神田錦町の新築ビル「KANDA SQUARE」に東京本部を新設。先の3事業と企画管理本部などから、約300名の社員が職場を移動し、東京本部を舞台にして新たなスタートを切った。

2019年の計画当初から、この東京進出プロジェクトを牽引してきた同社店舗開発部課長の的場久容氏は、次のように振り返る。「今回の東京進出は社長直々の発案です。当社は現在ほどドラッグストアがなかった時代に先代社長がその事業に着手するなど、“先見の明”とも呼べる将来を見通す力を重視してきました。今は業界内の移り変わりが激しい時代です。だからこそ、東京を拠点に改めて各事業部のつながりを強め、富士薬品の新たな側面やブランド力を世に打ち出したい思いがありました」。

株式会社富士薬品

現在、ルーツである富山市で二つの工場を稼働させ、さいたま市内に本社と大宮本部、そして2ヶ所の研究所を有する富士薬品。本社と大宮本部は自社ビルであり、社員の多くは埼玉県在住。従来通りの業態でも各拠点の連携に不自由はなく、むしろ利便性に優れ、社内の風通しもよかったという。ネックになっていた部分を強いて挙げるならば、社員の増員に伴うオフィススペースの不足くらいだ。「大宮本部では約600名の社員が働き、実質的にはワンフロアで約200名が従事していました。打ち合わせスペースが少ないとかフロアの移動に手間取るなど、小さな不満は出ていましたが、あのままでも大きな不便は感じることなく、通常運転で富士薬品の事業は回っていたと思います」。

ではなぜ今、東京進出なのか。そこには新薬の開発にも取り組んできた富士薬品ならではの理由がある。「2013年と2020年に自社開発した2種類の新薬は、痛風の薬です。開発から販売まで10年ほど時間を要し、市場規模もまだ小さいのですが、今後は特許を持つこの二つの新薬を武器に、海外の医薬品会社にライセンスアウトなどをして拡販を目指します。また、新薬の開発までを手がけるドラッグストアは、国内では富士薬品だけ。これらの事情を鑑み、さいたま市の本社と東京本部では、どちらがより“会社の顔”としてふさわしいか。契約成立や人材確保などに向け、ブランド力や発信力を高めるためにも、私たちには日本の一等地である東京進出が必須でした」。

従来の富士薬品にはなかった オープンな空間と先進のITツール

株式会社富士薬品

東京進出プロジェクトに選抜されたメンバーは、的場氏を含めて13名。富士薬品の5事業部から、それぞれを代表する社員が数名ずつ選ばれた。プロジェクトは各事業部から東京のオフィスに対する要望を吸い上げるかたちで進められ、東京進出の発案者である社長とのすり合わせは、的場氏が担当。その内容はまた、プロジェクトメンバーたちへ逐一フィードバックされたという。つまり、トップダウンで始まったプロジェクトではあるが、社長が当初打ち立てたコンセプトを軸に、実際にはオフィスで働く従業員たちの要望によって肉付けがなされていったのだ。「社長が思い描いていたコンセプトは、思いのほかシンプルで、ゲストを迎えるためのエントランスのあり方や、オフィスからの眺望や抜け感、オープンなフロア構成を重視したいということでした。来客用の応接室以外は、社長や役員用の個室も設けない予定だったので、機密性のことなどは逆に現場のメンバーの方が心配していたように思います」。

東京本部として最もふさわしい立地には、本社と大宮本部を置くさいたま市大宮からの距離感や、全国の営業所からの通いやすさなどを考慮し、千代田区神田エリアを選択。入居するオフィスは2020年2月に竣工し、次代の東京の街づくりを標榜する「KANDA SQUARE」の9階(賃室面積約865坪)に決定した。

ワンフロアを富士薬品1社で利用しているため、ゾーニングの自由度は高く、従業員が業務に取り組む執務フロアと、来客用のエントランスや応接室などを設けたゾーンを完全に分離。オープンさを重視した執務フロアの一角には、飲食や簡単な打ち合わせができるカフェ風のコミュニケーションエリア「パレット」をはじめ、オフィスコンビニやドリンクコーナーのほか、機密性が優先される電話応対などに配慮し、個室のフォンブースを利用できるようにした。また、体調が優れない社員のために、使いやすい場所に一般的より広めの休養室を男女1室ずつ設けている点も、ヘルスケアに関わる企業として合点が行く。

一方の来客ゾーンは、落ち着いた雰囲気でまとめられた開放的なエントランスのほか、生薬の名を冠した九つの会議室や応接室、元素名をつけた商談ブースを確保。さらには富士薬品のCMキャラクター、松岡修造氏をイメージした特別な会議室「修造ルーム」もあり、この部屋には回すと修造語録付きの景品が出てくるカプセルトイ「修造ガチャガチャ」を設置。ユニークなもてなしの空間になっており、商談などの場でゲストに楽しんでもらう算段だという。

株式会社富士薬品

また、この東京本部は、富士薬品が考える先進型オフィスのモデルとして、ITツールを大幅に導入。会議室や応接室を効率的に利用できる予約システムをはじめ、社員のPCから瞬時に大型モニターへ画面共有ができる会議ツールや、電子黒板のインタラクティブホワイトボードなどを採用することにより、紙の使用量削減にも成功した。そして、数多く導入されたITツールの中でも出色といえるのが、コミュニケーションエリア「パレット」に設置された「大宮神田常時接続ツール」だろう。

このツールは、大型モニターと音声機器を介し、東京本部と大宮にある営業本部の執務フロアを常時接続。予約なしに利用できるため、通りすがり感覚で、気軽に両拠点間でコミュニケーションが行えるという。「大宮神田常時接続ツールは、両拠点をつなぐ“窓”として、今回のプロジェクトが発足した当初から計画していました。朝礼における社長の話などもリアルタイムで共有できますし、たまたま通りかかった人へモニター越しに声をかけたり、そこで打ち合わせを始める社員もいます。本部同士が離れていても、まるで同じフロアにいるような感覚ですね」。

株式会社富士薬品

独自のオフィス運用マニュアルを若手社員が中心となって作成

目新しいITツールを大幅導入したうえに、東京本部は賃貸オフィスであるため、自社ビルの本社や大宮本部とは、オフィスの使用ルールが異なる。東京本部では入居する「KANDA SQUARE」の規定が優先されるため、働き方の面では就業時間を調整したほか、細かな部分では清掃方法やメール便の利用方法にも違いがあったという。そこで、東京本部独自のオフィス運用マニュアルを作成するために、東京進出プロジェクトとは別の若手社員11名からなるマニュアル制作チームを発足。大宮神田常時接続ツールやコミュニケーションエリア、来客ゾーンなどの使用ルールを、その社員たちが中心となって定めていったそうだ。

「ハード面、ソフト面を問わず、すべてをトップダウンで決める方法もあると思います。しかしオフィスはやはり、そこで働く従業員たちのもの。ITツールはもちろん、コミュニケーションを重視したオフィス空間は従来の富士薬品にはなかったものなので、それらを自分ごととして意識し、文化として根付かせるためにも、社員たち自身でマニュアルを考えてもらう必要がありました。特にコミュニケーションエリアは、仕事中に遊んでいるように思われるからと若手社員が萎縮してしまう不安もあったのですが、マニュアルづくりを経験したことで、彼ら自身が率先して使ってくれる場になりましたね」。

選抜されたマニュアル制作チームは、毎週木曜日の午後をマニュアル作成業務に取り組む時間とし、定例化。2020年4月をリミットに13回ほどミーティングの場を設け、それぞれが考えたマニュアル案を発表しては改善を加えるなど、地道な作業を繰り返したという。時には大宮の本部から東京本部となる新オフィスに足を運ぶなど、時間と手間を要したが、若手社員たちは日頃と異なるこのイレギュラーな業務に対し、思いのほかやりがいや楽しさを感じていたそうだ。

「マニュアル完成後には、寂しそうに『木曜日の定例はなくなるんですか?』と聞かれたり、積極的にマニュアルづくりに関わってくれた分、まわりの社員も巻き込みながら有意義にオフィスを使ってくれています」。

これからの変化を見据えた全社のモデルとなるオフィスに

株式会社富士薬品

今回の東京進出プロジェクトを、オフィスの仕様決めやマニュアルづくりに携わったメンバーだけではなく、全社員が一丸となるイベントにしたかったと、的場氏。「たとえば東京本部で使うワークチェアは、5脚ほどサンプルを用意し、本社や大宮本部に残る社員も含め、全社員に座り心地を試してもらって投票で決めました。そうすることで会社の東京進出に対する一体感のようなものを社内で醸成したかったんです」。

4月末より業務を開始し、5月7日にグランドオープンを迎えた富士薬品東京本部。社長を筆頭に社員一同のオフィスに対する評価は上々で、計画当初はITツールやオープンなフロア構成に抵抗を感じていた社員たちも、新しいオフィスにごく自然に馴染んでいるそうだ。「私たちが目指していたのは、“明日もまた来たくなるオフィス”です。オフィスに対する満足度が高まれば、社員たちのモチベーションや生産性も向上し、ゆくゆくはそれが会社の数字となっていきます。将来的にはこの東京本部をモデルケースに、従来の本社や大宮本部、さらには全国の営業所など、富士薬品全社のオフィスのあり方を刷新できたらと考えています」。

1年という期間をかけた東京進出プロジェクト。新拠点にふさわしいオフィス環境を構築するとともに、ここを舞台に活躍する社員たちの働き方や意識の変化が、富士薬品の次なるステップに大きな意義をもたらすことだろう。

企業名 株式会社富士薬品
施設 東京本部オフィス
所在地 東京都千代田区神田錦町2-2-1 KANDA SQUARE(神田スクエア)
移転日 2020年5月7日
規模・人員 約865坪・300人
CBRE業務 東京本部設立に関するプロジェクトマネジメント

この記事に関するCBREのニュースリリースを下記よりご覧いただけます。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2020年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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