関西ハイストリート賃料が急速に回復、
心斎橋と神戸ではコロナ禍前の水準を上回る
全国主要商業エリアの貸店舗市場動向をまとめた四半期レポート。
銀座、表参道・原宿、新宿、渋谷、心斎橋、梅田、栄、京都、神戸、福岡の最新動向を掲載。
小売業販売額* | 全国百貨店 売上高** |
消費者態度指数 23年9月*** |
銀座ハイストリート 空室率Q3**** |
銀座ハイストリート 賃料Q3**** |
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+6.6% 7~9月 (前年同月比) |
+9.5% 7~9月 (前年同月比) |
-1.0pts (前期比) |
-3.2pts (前期比) |
+1.2% (前期比) |
Q3 2022より空室率の調査対象フロアを「店舗ニーズの高い1階に限定」から「1階を含む賃貸区画のすべて」に変更しています
出所: * 経済産業省、** 日本百貨店協会、***内閣府、****CBRE
- 東京・銀座の今期(Q3)のハイストリート空室率は対前期比3.2ポイント低下の3.5%。新たな空室の発生が限定的だった一方で、比較的大き目の区画を含む複数の空室で後継テナントが入居した。今期のハイストリート賃料は260,600円/坪と、前期比1.2%の上昇となり、コロナ禍直前の2019年Q4の水準を1.0%上回った。足下の需給タイトな状況を踏まえ、銀座ハイストリート賃料は今後も緩やかな上昇が続くとみられる。一年後の賃料は今期実績を2.8%上回ると予想する。
- 大阪・心斎橋の今期(Q3)のハイストリート空室率は対前期比0.6ポイント低下の2.8%。複数の空室が消化された一方、新たに発生した空室はみられなかった。路面店舗の需給がタイトになりつつある中、既存テナントの契約満了を機に、より売上が伸びているリテーラーへの入れ替えを計画する物件もみられた。今期のハイストリート賃料は204,000円/坪と対前期比5.7%の上昇で、コロナ禍直前の水準(2019年Q4、198,000円/坪)を3.0%上回った。
- 名古屋・栄の今期(Q3)のハイストリート空室率は4四半期連続の0.0%となった。同エリアでは依然として募集物件が極めて少ない状態が続いており、そのため総じて成約事例も少ない。今期のハイストリート賃料は71,000円/坪と、3期連続の横ばいとなった。引き合いが多く、募集物件が少ないという需給タイトな状況ではあるものの、売上やコストの想定に厳格なテナントが多いため、相場水準が引き上げられるような勢いは今のところ見られていない。
Figure 1: 2023年Q3 ハイストリート空室率(上段)vs プライム&ハイストリート賃料(下段)
経済の再開が進み、小売業販売額はコロナ禍直前の水準を1割以上上回り、訪日外客数も順調に回復している。訪日外国人による消費額も、Q3実績はコロナ禍直前の2019年同期の水準を上回り、四半期ベースで過去最高額となった。消費活動の回復を受け、今期(Q3)の各都市のハイストリートでは、ドラッグストアのほか、日系アパレル、コスメブランド、大型の飲食店など、パンデミック下では出店の動きが止まっていた業態の出店ニーズが増加している。
一方、エリアによっては募集物件がなくなりつつあるため、パンデミック下でも総じて出店意欲が衰えることのなかったラグジュアリーブランドの動きが足下でやや鈍化しているところもある。しかし出店ニーズそのものは旺盛であるため、一つの募集物件に複数の引き合いが集まることで賃料水準が引き上げられる事例も少なくない。今期は、東京、京都、大阪、神戸でハイストリート賃料が前期に比べて上昇し、心斎橋と神戸ではコロナ禍直前(2019年Q4)の水準を初めて上回った。