移転を取り巻くコストと、その相場観
「100年に一度」の経済危機に際して、現在、業種や規模の大小を問わず、各社で聖域なきコスト削減が行われている。中でも、オフィスの賃料負担は、経営者が最も削減に着手したいものの一つだといっても過言ではないだろう。事実、全国のオフィスマーケットにおいて、「使用面積を見直し館内で減床する」や「賃料の減額交渉を行う」といった現入居ビルでの対応や、面積縮小や都心部から離れたコスト削減が図られるビルへの移転、人員や使用スペースを合理化した集約移転、さらには工場等自社施設への事務所統合などが増加してきている。
コスト削減目的のみならず、移転を計画する企業がまず直面するのは、「移転自体に、いったいいくらかかるのか」というイニシャルコストの問題だろう。どんな形であれ、引越には費用がかかり、また、オフィス移転はあくまで"非日常"な業務。いくら移転に手馴れた企業であっても、総予算をすぐさま捉えられるようなベンチマークを持つ企業はさほど多くない。加えて、オフィス移転はケース・バイ・ケースで、平均像が捉えにくいというのも、よく言われる話だ。
上に図示した「オフィス移転を取り巻くコストと、その相場観」。例として300坪の移転を想定しているが、それでも相場には幅があり、また移転の仕方によっては発生しない項目もある。逆に、大規模な本社移転ともなれば、とてもここに記した単価では済まないだろう。これは、あくまで一つのケーススタディ。移転の流れに沿って発生するコストのチェックリストとして、また、移転の専門家と相対する時の基礎知識として、お役立ていただきたい。