空室率は横ばいで推移するも、需要は依然堅調。
成約賃料は引き続き上昇傾向
シービーアールイー㈱の調査による、2017年9月期の福岡市中心部の空室率は、前期(同年6月期)から横ばいの0.6%となった。数値自体は横ばいであるものの、移転ニーズは変わらず活発で、新規の空室が発生した際には、外部募集に出る前に、館内テナントによる増床で消化されるケースが多々見受けられる。さらに、外部募集に出ても、解約予告期間内に後継テナントが決定するケースが一般的となっている。移転を検討している企業は、これまでより一層、意思決定にスピード感が求められるだろう。
想定成約賃料は、前期より3.0%上昇し、12,940円/坪(共益費込)となった。テナント需要の高い物件では、貸主が想定している賃料よりも、高額で成約しているケースも見受けられる。成約賃料の上昇を背景に、貸主による既存賃料の値上げ交渉も継続して行われている。移転や分室開設を検討する企業は、相場上昇や空室在庫が限定的なため移転候補先の選択肢が少なく、移転をあきらめ、入居中のオフィスのレイアウト変更等で一時的な課題解決を図るケースが増加している。
期待が高まる新規供給
2018年春に竣工予定の「紙与博多中央ビル」は、すでに複数のフロアが内定しており、満室での竣工が見込まれている。また、2018年秋から2019年春にかけ、祇園・呉服町エリアで複数棟のオフィスビルの竣工が予定されている。しかし、これらの供給量は限定的で、深刻な受け皿不足を解決するほどではない。今後も、タイトな市況が継続していくことが予想される。また、これら新築物件の成約状況によっては、周辺エリアにおける賃料水準の底上げが予想される。
福岡市が進める再開発事業「天神ビッグバン」については、航空法による建物の高さ制限の緩和が正式に発表された。これまで、「旧大名小学校跡」のみの規制緩和だったが、明治通りの高さ制限が、従来の75メートル(地上17階相当)から、最大115メートル(同25階相当)に緩和される。空港に近い渡辺通りの東側では、78~99メートルへの緩和が認められた。これにより、老朽化したビルの建て替えの後押しになることが予想・期待される。一部報道によると、博多駅周辺等でも、最大60~70メートル(同13~14階相当)への緩和を福岡市が要請しているとされ、高さ制限緩和については、引き続き注目が集まっている。
福岡支店 志賀 敦
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 12,000~15,000 円/坪 | 大型の空室は皆無。賃料上昇に歯止めをかける要因はなく、新規・継続賃料ともに上昇傾向が続くと予想される。 | |
博多駅東 | 10,000~12,500 円/坪 | 大型空室の成約があり、空室率はわずかに低下。博多駅前の賃料上昇に伴い、博多駅至近のビルを中心に相場上昇が続くと予想される。 | |
呉服町 | 10,500~12,500 円/坪 | 中大型規模の空室は募集後すぐに成約し、空室率は横ばい。2018~20年に3棟の新築が予定されており、今後、さらに賃料上昇に拍車がかかると思われる。 | |
天神 | 12,500~15,500 円/坪 | 博多エリア同様、大型空室はほぼない。今まで引き合いのなかった地下階の空室も、事務所使用で成約に至っている。今後も新規・継続賃料ともに上昇が続く。 | |
赤坂大名 | 10,000~11,500 円/坪 | 博多・天神エリアに需要が集中しているため、市場に大きな動きはない。供給も少なく、賃料・空室率の推移は横ばいとなっている。 | |
北九州小倉 | 7,500~10,000 円/坪 | 大型テナントの移転ニーズは多少あるものの、全体的にテナント需要は少ない。空室は微減、賃料は横ばい。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,500~3,200 円/坪 | 需要は堅調。今年新築の大型のマルチテナント型倉庫は、引き続き募集が続いている。既存倉庫は、中型を中心に品薄感が続く。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。